「ねえラフィット、私、貴方と出会えたのは運命だと思ってるの」
「随分とまた、いきなりですな」
「運命の赤い糸って本当にあるんじゃないかなって、思ったの」
貴方の唇がとても赤かったから、そういう錯覚をおこしただけなのかもしれない。でも、今は赤い糸だと思っておこう。
「そうそう、この本返すね」
「もう読んだのですか」
「すごくおもしろかった、また何かおすすめがあったら貸してね」
「ホホホ、もちろんですよ」
少し。
「ああ、そうだ、この間借りたハンカチも返すね」
私が指を切った時にラフィットが貸してくれた真っ白なハンカチ。洗濯したけど、ほんのり赤が残ってる白いハンカチ。ラフィットはこの薄い赤を見て、私を思ってくれるんだろうか。
「もう指はよろしいんですか?」
「すっかり」
また少し。
「ああ、あとこれも」
「差し上げると言ったでしょう」
「ううん、やっぱりもらえない」
私にラフィットと同じ赤は似合わない。
「やっぱりこれはラフィットじゃなきゃ」
そして少し。
「そう、あとね」
「名前」
「なあに?」
「どこへ行く気ですか?」
「…ん?」
「私が気づかないとでも?」
「さすが、ラフィット」
ぐちゃぐちゃに絡まった私達の赤い糸を、少しずつ少しずつほどいてほどいてなくしてしまおうと思っていたのに。もう気づかれてしまった。さすが、さすがだよラフィット。
「行くところもないくせに貴女はまったく」
「ラフィット、」
さっき返した口紅が、私の小指とラフィットの小指に引かれた。
(ぐっちゃぐちゃのごったごた)
2011/06/05.