「船を降りろ」
「………ん?」
「聞こえなかったのか?船を降りろと言ったんだ」
「おかいものにいくの?」


そんなんじゃないってのは、なんとなくわかった。だって、いつものやさしいこえじゃないんだもん。アーロン、いつもはもっと、わたしにはやさしいこえだもん。でも、いまのはちがう。ぜんぜんやさしくなくて、こわいこえ。


「ごめんね、わたしばかだからもっとちゃんといってくれないと、わかんない」
「この一味を抜けろ。こう言えば分かるな?」
「ううん、わかんない。わかんないよ」
「明日の昼にはこの島を出る。それまでに降りろ」
「なんで?」
「分かったな、明日の昼だ」
「りゆうもないのに、おりろっていわれても、やだ」
「言ったところで、お前には分からねえ」
「なんで?わたしがばかだから?がきだから?いってよ、わかる、わかるよちゃんと!」


アーロンがグラスをデッキにたたきつけた。わたしのあしもとにかけらがちらばってちょっときれた。いたいよ、いたいよ。


「俺のこれからに、お前は邪魔だ」
「なんで?」
「やっぱり分からねえな、お前には」
「わ、わかるよ。わかるけど、わかんないよ」
「クロオビ!」


クロオビがわたしをかついで、おかねがはいったちいさなふくろといっしょにすなのうえにおろされた。


「クロオビ、いたいよ」
「悪いな」


なんであやまるの、いったときにはもうすなはまにはわたししかいない。ふねはきしをはなれてた。わたし、にんじんものこさないでたべたし、へやのかたづけだってしたよ。アーロンのいうことちゃんときいたよ。なにがだめだったのかな。やっぱりわたしにはわからないよ。

おとなになったら、わかるのかなあ。



(お前のこれからに、俺は邪魔だ)

2011/04/12.

「#寸止め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -