「お前は優しい」
「…どうしたの、いきなり」
「と、シュラが言っていた」
「あ、そう」
「優しいとは何だ」
「そんなの、人それぞれだと思うけど」
「笑顔を絶やさねば優しいのか、甘い言葉を吐けば優しいのか、乱暴をしなければ優しいのか」
相変わらずの無表情だけど、今日のエネルはどこか不安そうだ。だから私もちょっと不安になる。
「シュラに、何か言われたの?」
「別に何も言われてはいない」
「じゃあ、いきなりどうしたの?」
黙り込んでしまった。いったいどうしたっていうんだ、この人は。
「何か言いたいんなら、ちゃんと言ってよ」
「何でもないと言っているじゃあないか」
「…ほんとに?」
ならいいんだけど。視線をまた本に落っことして、だけどちらり。エネルはやっぱりまだ私を見てる。相変わらずの無表情だけど、やっぱりちょっと不安そうな表情で。そんな顔されると、黙ってられないんだよ。
「本、読んじゃダメ?」
「勝手にすればいいだろ」
「そんなに見られたら、ちょっと嫌なんだよ、ね」
「…そうか、ならやめよう」
「いや、うん」
言ってることとやってることが全然違うよバカ。そんな顔でずっと見られたらちょっと変な気持ちになるよ。ドキドキするような、そうでもないような。やっぱりドキドキするような。
「名前、」
「ん?」
「お前も、優しい男とやらが好きなのか?」
ああ、私の可愛い人。
(あなたが私を嫌う日はいつか来るかもしれませんが、私があなたを嫌う日はきっと来ないので安心してください)
2011/06/01.