世界一の剣豪になるとかなんとか言って、1人で海に出ていったあいつ。どんなところでも迷子になれる天才的なあいつ。あきらかに何か狙ってんじゃないかって感じの緑色の頭のあいつ。腹巻なんかをお洒落だと勘違いしてるあいつ。あんなに小さかったあいつ。ちょっとおっきくなったあいつ。めちゃくちゃおっきくなったあいつ。弱かったあいつ。ちょっと強くなったあいつ。めちゃくちゃ強くなったあいつ。1人で特訓に明け暮れてたあいつ。くいなに負けて悔しがってたあいつ。くいなとなんだかんだ仲が良かったあいつ。くいなが、好きだったであろうあいつ。私を好きではなかったであろうあいつ。私をおいてっちゃったあいつ。海賊になっちゃったあいつ。指名手配されたあいつ。デッドオアアライブなあいつ。ずっとずっと遠くに行っちゃったあいつから、昨日手紙が届いた。

手紙なんて書くようなやつじゃなかったのに、何か気持ち悪いな、逆に。ずっと連絡よこさなかったくせに今更いきなり…まさか、あいつしぬんじゃないよね、なんて。

しかも手紙っていうにはちょっと短すぎたし。こいつはいったい私に何を伝えたかったんだろう。わかんないよ。



お前は今、どこに居る?



いや、シモツキ村だけどね。てか、変わらずシモツキ村に居ると思ってるから手紙出したんじゃないの?馬鹿なの?私はちゃんとシモツキ村に居るよ。どっかでっかい島に行くなんてこともなく、ずーっとここに居るよ。

そんなこと今更確認しちゃってさ、ほんとこいつどうしたんだよ。

ずるいよ。



(貴方は今、どこに居ますか?)


2011/05/27.

BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -