「お疲れ様でした」
「まだ居たのか」
「おかげさまで」
「おいおい、上司にそりゃねえだろ」
「すみません、私嘘が下手なもので」
「はいはい」
「…では、お先に失礼します」
「ちょっと待ちなさいや」
「何でしょうか?」
「俺も帰るから、ちょっと待ってろ」
「どうして待たなければいけないんですか?」
「こんな遅い時間に危ねえだろ、いくらマリンフォードとは言え」
「意外と心配性なんですね、ありがとうございます」
「じゃあ、待ってろよ」
「いえ、お気持ちだけで結構です」
「お気持ちだけじゃ駄目なんだって」


大将殿は片手で私を捕まえて、もう片方の手で器用に帰る支度をする。まあ、支度って言ってもジャケット持ってアイマスクを机の定位置に戻すだけのことだけど。


「大将、私の家は本部を出てすぐです」
「ついでに家庭訪問といくか」
「意味が分かりません嫌ですよ、絶対に」
「まあ、そう言いなさんな」
「私、恋人以外の男の人は絶対に入れないって決めてるんです」
「じゃあ恋人になりゃあ問題ねえな」
「冗談やめてください、笑えません」
「笑わねえで聞いてもらえたら、嬉しいんだけどな」
「やめてくださいよ、何だか大将じゃないみたいで嫌です」
「…まあ、今日はこんくらいにしといてやるか」
「意味が分かりません」
「何にでも意味を求めるな、理屈じゃねえんだ、愛ってやつは」
「うまいこと言ったつもりですか?意味が分かりません」


こうして笑いながら、私達の距離は曖昧なまま。



(明日は1mm近付きたい)


2011/05/22.

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