「釣れてる?」
「いや、さっぱりだな」
「そっかー…お腹すいたねえ」
「腹減ったなー」


ウソップが持ってる釣竿はぴくりとも動かない。いつものごとく、ルフィが食料を全部たいらげたらしい。毎度毎度、ルフィは我慢を知らないのかな。いや、ルフィに我慢は似合わないな。世界一似合わない。


「名前、何読んでんだ?」
「お金持ちのちょっと不幸な女の子が主人公の話だよ」
「へえ、金持ちのちょっと不幸な…カヤを思い出すなあ」
「カヤ?」
「ああ、名前には話したことなかったなー」


ウソップが私の本を見て笑った。私も笑った。
あ、ウソップ、カヤさんが、好き、なんだ。


「会いてえなー」
「カヤさんは、ウソップの大切な人?」
「カヤだけじゃないさ、シロップ村のみんなが大切なんだ、俺は」
「でも、その中でもカヤさんは特別でしょ?」
「さあ、どうだろうなあ」


曖昧に笑うウソップに、私も曖昧に笑った。カヤさん、ずるいなあ。顔も知らないカヤさんを羨ましいって思うなんて、妬ましいと思うなんて。私は、私は…。きたない。


「はやく、会えるといいね」
「ん?」
「カヤさんに!」
「そうだな!その時はお前も一緒がいいな」
「どして?」
「カヤの友達になってやってほしいんだ、あいつ友達いねーからよ!」


好きな人が好きな人と、友達になってほしいだなんて。そんなの、そんなのって…。でも、ウソップのお願いなら、特別に聞いてあげようかなって、思うんだ。


「うん!私もはやく、カヤさんと友達になりたい!」



(私の好きな人が好きな人の全部がほしいよ)


2011/05/12.

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