お好み焼きの放物線
ジュウッと鉄板の音をバックサウンドにわたしは話を切り出した。
ちなみにこの音はタッカーが焦げたお好み焼きの代わりに次のお好み焼きを焼いている音。
さっきまで笑い転げてたのに…切り替え早いなぁ…
『笠松センパイのあだ名…閃いた』
ポツリと呟いたらバッとリコとタッカーがこっちを見た。
…リコって呼び方、センパイなのにいいのかな?なんて今更思う。
「なになにっ!?!?どんなの?!」
「いや、オレはいーって…」
「まぁまぁ!いーじゃないっすか!この際ですし、笠松さんもつけてもらいましょーよ、あだ名!!」
口々にタッカー達が言う中、わたしは笠松センパイに向き直るとジッと見上げる。
笠松センパイはどうやら観念したみたいで、わたしの視線を少し戸惑った様に受け止めた。
うん、やっぱり笠松センパイにはあのあだ名しか思いつかない。
一番しっくりくるもん。
わたしは頭の中で再度閃いたあだ名を確かめてから口を開いた。
『…“おにいちゃん”で』
「「え…?」」
「はぁ!?!?」
その時、ポーンとお好み焼きが宙を舞った。
どうやらタッカーがお好み焼きをひっくり返す時、力の加減を間違えたみたい。
放物線を描いてお好み焼きの向かう先は…
「あ」
緑色くんの頭の上。
頭からお好み焼きを被った緑色くんは無言で立ち上がり、タッカーの首根っこ掴んでお店の外に引きずって行った。
外からタッカーの断末魔みたいのが聞こえてくるのは気のせい…のはず。
少しして戻ってきたタッカーの頭には大きなタンコブが一つ出来上がっていた。
「いってぇ…真ちゃんってば本気で殴んだもんなー…」
「当然の報いなのだよ」
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