ゆるんだ仮面から見えた涙
激闘の末、結果は…
「試合…終了ーーー!!!」
82対81の一点差で誠凛の勝利。
予想外の結果にわたしも正直驚きを隠せない。
というより、この会場にいる人のほとんどが予想していなかった試合展開と結果だったと思う。
「よし、オレらも出るか」
そう言った笠松センパイの声が聞こえるまで、わたしはただコートを見つめていた。
グルルルル…帰り道、わたしのお腹が大きく鳴った。
お腹すいた…黄色くんたちと別れたらどっか入って食べよっと。
「ゆあっち、お腹すいたんスか?」
『うん、でも…』
「じゃあ一緒にこれから食べないっスか?いいっスよね、センパイ」
うん、雨だと声の通りが悪いはずなのになんで黄色くんには聞こえたんだろう…これ聞いたら負けな気がする。
「いいけど、大丈夫か?女なんだから家に一本入れとけよ?」
笠松センパイが心配そうに言った。
黄色くんがあっと気まずそうな顔をする。
『…いないので大丈夫なんです』
そう言って笑うと笠松センパイも気まずそうな顔になった。
「そうか…ならいいんだけどな」
さらりと言って笠松センパイは前に向き直った。
わたしは今キョトンとしているに違いない。
もっと根掘り葉掘り聞かれると思ったからだ。
くるりと振り返った笠松センパイは、
「それと…無理して笑ってもロクなことねーぞ」
と雨音に紛れるか紛れないかの低音で言った。
わたしはその一言に無性に泣きたくなった。
その時、そんなわたしを見て黄色くんが、青ざめていたのをわたしが知るわけもない。
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