読みは所詮ヨミでしかない
誠凛は正邦に73対71で勝ち、決勝に駒を進めた。
少し厳しい場面もあったけど、なかなか良い試合だったと思う。
このわたしが見ていて飽きなかったのだから。
途中、黄色くんや笠松センパイの意見も聞けて、楽しかった。
特に笠松センパイの試合の見方はとても勉強になった。
そして休憩を挟み決勝、誠凛対秀徳戦が始まった。
誠凛ボールから始まりいきなり均衡状態に入ってしまったようだ。
「均衡状態に入っちゃったっぽいっスねー…」
ため息混じりに黄色くんが言った。
タイマーは残り8分30秒と映っている。
『笠松センパイはこれを…どう見ますか?』
「そうだな…一度流れをもっていかれるとそのQ中に戻すのは困難だ。両チーム、無得点のままもうすぐ二分…このままいくと第一Qはおそらく、先制点を取った方が獲るだろ」
わたしの後ろで、
「なんでオレには聞いてくれないんスかぁ!?」
と嘆く黄色くんを無視して笠松センパイの話に聞き入る。
やっぱり、同じ読みだ。
そう簡単に、この均衡は崩れそうにないけど。
と、突然。
パッ―――
緑色くんが3Pを決め、均衡が破れたかのように思われたが、直ぐ様水色くんとガミガミの連携で取り返す。
水色くんのレーザービームのようなパスに、わたしの両脇二人とも、言葉を失っていた。
わたしは初見ではないから驚きはしない。
むしろ練習相手になっていたのだから驚くわけもない。
けど、このタイミング…!このパスで流れを上手く切った。
そのまま第1Qは14対18で誠凛が追いかける形で終わると思った次の瞬間。
コートラインでボールを手に狙いを定める緑色くんの姿が。
『あれは…』
「ん?どうかしたんスかゆあっち」
黄色くんが覗き込んで来たので、わたしは緑色くんを指差す。
笠松センパイは一早く気づいた様子。
「あいつっ!」
次の瞬間放たれたボールは、高い弾道を描き、ゴールネットをくぐった。
唖然として言葉も出ない。
騒然とする会場で、わたしは無性にバスケがしたくなった。
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