長い付き合いのなせるワザ
キイっと屋上の扉が開いたかと思うと、水色くん以外ぼろぼろになった一年生がパン片手に帰ってきた。
「買ってきま…した…」
「おつかれー、ありがとっ!ジュースあるよ」
相田センパイが笑顔で迎えた。
「こ…これ…例の…」
ビニール袋を震えながら差し出す一年生部員に伊月センパイが
「あーいーよ、買ってきたオマエらで食べな」
と断った。
「え?いいんですか!?」
「いいって、遠慮すんなよ」
日向センパイも苦笑いで促す。
本当に誠凜バスケ部のセンパイたち、いい人だ…というかなんか格好いい…
そんな風に一人感動していたら、さっきまでパンを美味しそうに食べていた水色くんがやって来た。
「これ、ゆあさんが好きそうだったので、ついでに買ってきました」
そう言って、水色くんはわたしに1つのパンを差し出してきた。
受け取り、ラベルを見るとそこには”フィッシュサンド“と書かれていた。
きゅぴーんとわたしの目が無意識に輝いた。
「魚好きなゆあさんにぴったりだと思ったんですが…どうですか?」
感動で何も言えないわたしを覗き込みながら水色くんが言う。
わたしは嬉しさの余り、水色くんに思いっきり抱きついた。
『ありがと、水色くん』
「喜んでもらえて良かったです」
『さっそく食べてみる…!』
「どうぞ」
そんなわたし達の後ろでは小金井センパイが、
「こいつらナチュラルにいちゃつくよな…」
なんて呟いていたんだとか。
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