あいつが階段から落ちた。


そう聞かされたのは調度、昼休みが始まる頃だった



恋の再確認


あいつが?そんなヘマをするようには思えないが、でもまさか…
俺の頭の中で色んな考えがぐるぐる回る。どんなに考えたってその場に居なかったのだ憶測しか出来ないのだが。
とにかく、不愉快にも奴が気になって仕方がないので俺は保健室へ向かう事にした


駆け足で、早く早く…

(あいつが、無事であるように)

どんなに悪態を吐いたところで自分は結局あいつに惚れていて、それだけに心配なのだ。本当に不愉快な話だが。

保健室の扉を開ければ視界の右側…ソファーの上に座るゴールドを見つけた

「シルバー?なんでお前此処に……」
「どこかの阿呆が階段から落ちたと聞いてな。どんな有り様か見に来ただけだ」
「ほー、つまりオレサマが心配だったと」
「寝言は寝て言え、馬鹿が。」
「ああ!?ンだとこの…っ」
「押されたのか?」
「…っ………おう」
「そうか…その足は?」
「捻った。…歩くのはちょっとしんどいかな程度」
「……分かった」

俺が踵を返して保健室を去ろうとすれば、後ろから待ったの声を聞く。足を止めて振り返ってみれば、ゴールドが俺を真っ直ぐ睨んで問い掛けた

「何処へ行く気だよ」
「何処へ行こうと俺の勝手だろう」
「敵討ちでもしに行くのか?」
「お前の敵を討つと?バカバカしい。鬱憤を晴らしに行くだけだ、自意識過剰も大概にしろ」

苛々、苛々。

正直に言ってしまえばこれ以上、怪我をしたゴールドを見ていたくなかった。その腕の絆創膏や頬の湿布の下の傷全てが俺以外の人間から受けた傷だと思ったら苛々して仕方が無いんだ。
…狂ってる。俺は盛大に溜め息を吐いた
目星はついている。先週ゴールドに目を着けて返り討ちに合った同学年の1グループの仕業だろう。

「行くなってば!!」
「…………?」

ゴールドがかぶりを振りながら驚く程大きな声で言ってきた。俺はゴールドの方へ歩みよって、しゃがんでその金色を見遣る

「なんだ?」
「………………歩くのやだ。体中が痛くて、動くのが、やだ。」
「で?」
「お前が居なくなっちまったら俺…」
「居なくなると言っても数分だ」
「その数分の間にトイレ行きたくなったらどーすんだ」
「……………俺を足代わりにしようとしてるな?」
「しようとするもなにも、俺が怪我した時点でお前は俺のアッシーなんだよ。」
「アッシー君はそんな意味じゃない気がするが」
「足に使われんならみんなアッシーだ。」
「全く最低だな」
「なんとでも。」

口ではどうのと言えるが俺には分かっている。詰まりは寂しいのだろう、階段から落ちた事に少なからず恐怖を感じたのだろう、精神的に弱ってしまったのだろう、だから俺が隣に居ることを求めるのだろう。
全く素直じゃない。人の気を逆撫でする様な言い方でしか伝えられないのか貴様は、不愉快な奴だな。
そこを全てひっくるめ、コイツの考えが分かる所や、それすらも愛おしいと感じてしまう自分も既に末期なのだが。

「早退するか?」
「……おう。」

きっと…いや、絶対俺が運んで帰るのだろうが全く苦じゃない、それはきっと相手がゴールドだからだろう。




end


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