シルバーの一番はきっとブルー先輩だ。(きっとじゃないな、絶対だ)

「俺とブルー先輩が崖から落ちそうになっててどっちかしか助けられないとしたら間違いなくブルー先輩を助けるんだ」


なんだよ、俺一応アイツの恋人だろ?


と、シルバーのことを俺にじゃれついてくるバクたろうに愚痴っていた。

ブルー先輩の前だとあからさまに変わるアイツの態度。
なぁ、お前のその態度が俺をどれだけ傷つけてるか知ってる?


「シル、バー…」

時々アイツが本当に俺のことが好きなのか疑いたくなる。
何をするにもブルー先輩優先で。

今日だってそう。
先に俺と約束してたのに。


「…っ…な、んだよ…」


ぽろっと目から何かが零れ落ちた。

バクたろうが心配してるのか、か細い声をあげて擦り寄ってくる。
ごめんな、こんなのすぐとまるから。

「…と、まれよ…」

何回拭っても目から零れてくるそれは一向にそれはとまる気配がなくて。

もうおもいっきり泣いてしまおう

そう思った時だった。

「ゴールド」


と目の前から聞き覚えがありすぎる声が俺の名前を呼ぶ。
ゆっくり顔をあげると

「シ、ル…バー?」

そこには心配そうな表情をしているシルバーが。
なんでシルバーがここにいるんだよ。
だってお前ブルー先輩とカントーにいるはずじゃ…

この際どーでもいいやそんなこと。


「泣くな」

「だ、れのせいで…泣い、てると…思ってんだ」

「…俺のせいか」

嗚咽まじりに言い返せば俺の目尻にキスをしながら"すまない"と謝ってきた。(お前が素直に謝るなんて珍しい)

「…用事…終わったのかよ、」

「あぁ、予想以上に時間がかかってしまったがな」

「ふーん…」

どんな用事だったかなんて知らないし興味がないけど俺のことをほったらかしにするぐらい大事な用事だったらしい。

そう考えると胸が苦しくなって止まった涙がまた零れそうになる。

黙って俯いているとこの空気に耐えられなくなったのかシルバーがずっと手に持っていた小さな花束をずいっと俺に差し出してきた。


「…何この花…?」

「マリーゴールドだ」

「マリーゴールド…なんで…この花を俺に」

花束を受け取りながら問いかけてみたら


"お前と同じ名前の花だから"


そう言ってシルバーは少し顔を赤くしてまっすぐに俺を見つめてくる。
そんなシルバーに俺は目線を外せないでいた。

顔がだんだん赤くなっていくのが分かる。




(どうしよう)


(嬉しい)


(大好きだ)


「…しゃーないから…今日のことはこの花束で許してやる」


ありがとう

ぼそっとお礼を呟けば

「…どう致しまして」


と言われてぎゅっと強く抱きしめられた。


「シルバー」

「なんだゴールド」






ねぇキスしようか

(そう言えば君は笑って抱きしめてくれて)

(それから、)







(2010.8.8)
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