突然だけど俺はスタイルも良いし胸だってあるし顔も綺麗だし世間では美女に分類されると思う。
これは自惚れなんかじゃない、事実だ。

だからこんなことが起こるのもまれじゃない。


「キミ可愛いね、一人?」

「よかったら俺らと遊ばない?」

(…うぜぇ)


俺、ゴールドはただ今絶賛ナンパされ中。

なんでこんなことになっているのか。
それは全部バカシルバーのせいだ。

久々にデートしようと言ってきたのはシルバーからで、俺は嬉しくて何度も頷いたのを覚えてる。
シルバーと二人きりでデートするのは1ヶ月ぶりで──いつもレッド先輩たちに邪魔されるんだよな──嬉しすぎて昨日眠れなかったぐらいだ。
おかげで少し目の下に隈が出来てしまった。(化粧でごまかしてるけど)

普段履かない短めのひらひらしたスカートなんて履いてみたりして集合時間30分前にはもう待ち合わせ場所に着いていた。


「俺どんだけ楽しみにしてんだろ…」

嬉しすぎてにやける口元を手で隠しながら俺はシルバーが来るのをそわそわしながら待っていた。




「………」

それから1時間後、待ち合わせ時間はとっくに過ぎているのにシルバーが一向に現れない。
待ち合わせに選んだ場所は人通りの多い場所だからもしかしたら俺が見つけられないのかと思ってきょろきょろと周りを見回してみてもシルバーらしい人物は見当たらないしポケギアに連絡しても全く繋がらない。

「シルバー…」

もしかしてデートの約束したこと忘れてるとか?
いや、シルバーに限ってそんなことは…

いろいろ考えていたらじわっと涙が浮かんできてそれを服の袖で拭っていると、ぽんっと肩を叩かれた。

「シルバー!?」

シルバーが来てくれたと思って勢いよく顔をとそこには顔も見たことのない二人組の男が立っていた。

そして冒頭に至るわけだ。

ナンパなんて何度もされたことがあるから今回も同じようにテキトーにあしらってその場から逃げようと思ってた。


「…彼氏待ってるんで」

「でもキミ1時間以上ここで待ってるけど彼氏は全然現れないじゃん」

「そうそう、そんなヤツほっといて俺らと遊ぼうよ」

なんだよコイツら、ずっと俺のこと見てたのか…

「気持ち悪…」

ぼそっと呟いてその場からダッシュで逃げだそうと足を踏み込んだ瞬間、ぐいっと強い力で肩を抱かれてしまった。

「は、なせよ…!」

「ねぇ俺らとイイコトしようぜ」

そう耳元で囁かれぶるっと身震いがした。
どうにか逃げ出そうともがいてみるけどびくともしない。
それどころか抱き寄せる力は強くなって男たちの手が俺の身体をまさぐってくる。

気持ち悪い、吐き気がする。

助けてくれと周りを見てもみんな知らん顔。
なんで、誰も助けてくれないんだよ…!
誰か助けて…

「シル、バー…!」

大好きな人の名前を叫んでぎゅっと目を閉じた瞬間、どかっ!と何かが殴られる音がしたと同時に身体がふっと軽くなった。

閉じていた目をあけてみるとさっきまで俺の身体をまさぐっていた男たちが倒れこんでいた。
その頬は痛々しく腫れている。

「お前たち、何人の女に手を出しているんだ」

後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

俺の大好きな声だ。


「シルバー!」

「逃げるぞゴールド」

そう言ってシルバーは俺の手をぎゅっと握って俺たちはその場から駆け出した。







「すまなかったなゴールド」

その後ひたすら走って近くにあったシルバーの隠れ家にやってきた。


「ほんとお前が来るの遅いせいで酷い目にあったぜ、でも」

「…でも?」

「シルバーが絶対来てくれるって信じてたし」

俺がそう言うとシルバーは驚いたように目を見開いたけどすぐに口元を緩めて"そうか"と呟き俺に優しくキスしてくれた。



俺にはもうそれだけで十分だ。





モンシェリー


(シルバーが来てくれた時、)

(俺には王子さまが助けにきてくれたみたいに見えたんだ)








モンシェリー=私の愛しい人

(2010.7.17)
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