目の前でゆらゆら揺れる緑色の物体をシルバーは不思議そうに眺めていた。
そこには文字が書かれた紙も吊るされている。
「おいゴールド、なんだこれは?」
「なんだって…笹だけど、お前今日七夕って知らねぇのか?」
「七夕…?」
ゴールドに口から出た"七夕"という聞いたこともない言葉にシルバーは眉間に皺を寄せた。
今日、7月7日は七夕。
織姫と彦星が一年に一度会える特別な日。
「この笹に願い事を書いた短冊を吊るしたらその願い事が叶うんだぜ」
ほらシルバーも書けよ
そう言ってゴールドがシルバーの目の前にずいっと突き出したのはペンと短冊。
しかしシルバーはそれを受け取ろうとはしなかった。
「俺はいい」
「なんでだよ?一緒に書こうぜ」
「だが、」
「いいから書け、命令!」
痺れを切らしたゴールドが無理やりシルバーにペンと短冊を持たせると何書こっかなーと呟き自分の短冊に取り掛かった。
そんなゴールドにシルバーは、はぁ…と溜息を吐きつつも嬉しそうに笑みを零し自分も短冊に何を書こうかと考え始めた。
―――
「よし書けた!シルバーも書けたか?」
「あぁ」
あれから約15分後、何を書くか散々迷っていた短冊がようやく完成してゴールドは満足そうに笑みを浮かべる。
「シルバーはなんて書いたんだ?」
ゴールドがそう問いかけるとシルバーは自分の書いた短冊をゴールドに突き出し、ゴールドは突き出されたそれを受け取ると「なになに…」と読み始めた。
それを読んだ瞬間ゴールドの顔はこれでもか、というほど真っ赤に染まり始める。
「っお、前なに変なこと書いてんだよっ!」
ばしっと受け取った短冊をシルバーに投げつけ睨みつけた。
その目を少し潤んでいる。
「"ゴールドが俺の嫁になりますように"ってどうゆう意味だよ!!」
「そのままの意味だ。短冊に書いた願い事は叶うんだろ?」
(コイツ…!)
怒りが脳内を占領しているゴールドだがそんな願い事を書いてくれたなんて…とほんの少しだけ喜んでいるのは誰も知らない。
「俺のも見たんだ、ゴールドも見せろ」
そう言ってゴールドの手の中にある短冊を奪おうとシルバーが手を伸ばした瞬間ゴールドはシルバーの手をばしっと叩きシルバーと距離をとる。
「やだよ!絶対見せねぇ!」
「人のを見ておいて自分のを見せないなんて不公平だろ」
「知るかっ!」
バクたろう出てこい!
自分の手持ちから相棒のバクフーンを呼び出すと"笹の一番てっぺんにつけてくれ"と言いながら短冊を持たせた。
バクフーンは大きな声で鳴くと前足を器用に使い笹の一番上にゴールドの短冊をくくりつけていく。
「ずるいぞゴールド」
「うっせぇ」
(だって見られたくねぇんだよ)
笹の一番上で風に揺れている短冊に書かれた言葉は、
織姫にお願い
(毎日ずっとシルバーと一緒にいれますように)
(一年に一度じゃ足りないよ)
(2010.7.7)