好きだった

それはもう過去形



「最悪…」

ワカバへ向かう道を歩きながらぼそっと呟く。

ふられた。
俺は本気で好きだったんだ。
でもアイツはそうじゃなかったらしい。


「ムカつく、悔しい…」

さっきからそればっかり頭に浮かんでくる。

諦めろよ俺。もうアイツとは終わったんだ。

そう自分に言い聞かせてる…でもまだ納得できない自分がいて。

「な、くなよ俺…」

ぽろっと零れてきた涙を服の袖で乱暴に拭う。
泣くとさらに惨めな気持ちになるから。

ごしごしと瞼を擦っていると、とんっと何かにぶつかってしまった。


「っすいませ、」

「ゴールド…?」

「…っシルバー」


俺がぶつかった相手、それはシルバーだった。
最悪だ…こんな時にシルバーと会うなんて。
コイツに泣き顔なんか見せたくないのに。

「何、泣いてるんだゴールド…?」

「べ、つに…」

「…もしかしてアイツと何かあったのか?」

「…っ…!」

何でお前はそんなに鋭いんだよ。


(ムカつくムカつくムカつく、)


でも気付いてくれたのが嬉しくて、


涙が止まらなかった。

「シル、バぁ……俺ふられた…」

「そうか」

「俺本気で好きだったのに…」

「…あぁ」

「でも…最初から俺のことなん、か好きじゃなかったって言われ、」

最後まで言い終える前にぎゅっとシルバーが俺のことを抱きしめてくれた。


正直言うと今誰でもいいから抱きしめてほしかった、傍にいてほしかった。
でも今会ったのがシルバーで良かったって何故かそう思った。



シルバーの体温とか心臓の音とか腕の中とか、すべてが安心できたんだ。





きでした、誰よりも

(大丈夫…いつか全部忘れられるから)





(2010.6.23)

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