会いたいと思っても決して自分から会いたいとは言いません。(だって恥ずかしいから)


『──もしもし』

「グリーン?ご飯もうすぐなくなりそうだから持ってきて」

『はぁ?いきなり言われても─』

「じゃあお願い」

何か言いかけていたけど気にせずポケギアの電源ボタンを押した。
何かあったらすぐ電話しろと言われて持たされたポケギア。
グリーンから何回もかかってきたけど自分からかけたのは今日が初めてだ。(ようやく役にたった気がする)
ご飯が足りないっていうのは嘘。
グリーンに会いたいっていう口実のためだったり。
なんだが今日はとてもグリーンに会いたい。
ぎゅってしてほしい。

「早く来ないかな」

膝の上で丸くなっているピカチュウの頭を撫でながらグリーンが来るのを楽しみに待っていた。



───



「…来ない」

電話をかけてから三時間。
グリーンが来る気配が全くない。
何時もならグリーンが俺に電話をかけてから一時間以内には来てくれるのに(そして半日滞在する)


(遭難したのかな?)

…何百回も来てくれているから遭難はしないか。
それに今日は吹雪いてないから何時もより来やすいはず。


(じゃあなんで来てくれないんだろ)


(急にあんなこと言っちゃったから怒ってる?)


(…寂しい)


ちょっと潤んできた目を隠すように膝を抱えて俯く。(…ピカチュウが心配してる)

その時"ぎゅっ"と雪を踏んでいる音が聞こえてきた。


「グリーン!」

来てくれた…!と思って勢いよく顔を上げた。
でもそこに居たのは、


「ヒビキ…?」

「あっレッドさん!やっと会えた!」

迷子になって大変だったんですよと言いながらながら俺に近付いてくるヒビキ。
…なんでヒビキがここに?

「グリーンさんに頼まれてご飯持ってきました!」

どうぞ!と手に持っていた大きな荷物を差し出された。

「…ヒビキ、グリーンは?」

「グリーンさん何だかジムの方が忙しいみたいで」

ご飯を届けに行けないから代わりに届けに行ってくれとグリーンに頼まれたらしい。(いいこだなヒビキは)

「……そっか…わざわざありがと」

ヒビキの頭を帽子の上からわしゃわしゃ撫でてみた。

「いーえ!それじゃあぼく帰りますね!」

「うん、気を付けて」

大きく手を振りながら帰っていくヒビキに手を振り返しながら見送る。

グリーン、ジム忙しいんだ。
何時もサボってたつけがまわってきたのかな?(サボってる理由は俺に会いに行っているからだけど)

ジムリーダーなんだからジムの用事を優先しなきゃいけないってことは分かってる。
けど俺わがままで気まぐれだから構ってほしい時に構ってくれないと。
とりあえずグリーンに素直に"会いたい"と言ってみよう、そう思った。





言わなきゃ分からない




(2010.1.23)


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