熱で潤んだ瞳、荒い息づかい、乱れた肢体を期待してたのに…


「何か違う」

「…何が?」

「いや、こっちの話だ」

ヒビキが熱を出した。そう帽子女から聞いた瞬間オレはその場を飛び出し全力疾走でヒビキの家に向かっていた。

正直言うとやましいこと考えてないと言ったら嘘になる。
看病とか言いつつ身体を触りまくれるじゃ…とか思ってた。

けど家に来てみたら案外普通だったヒビキに少しショックだったのは俺だけの秘密だ。

「大丈夫か?」

「うん…今朝よりはマシになった」

「おばさんは?」

「ママ…旅行行って、て…いないの…」

そう言って部屋に戻ろうとするヒビキはやっぱりふらふらで。


「部屋まで連れてってやるよ」

ヒビキのもとまで駆け寄ってお姫様抱っこしてやる。
いつもなら恥ずかしいからやめて!と言って暴れるヒビキも今回はぎゅっと首にしがみついて大人しい。



―――



「っよし、ちゃんと寝ろよ?」

ヒビキを二階にある部屋まで連れていき優しくベットに寝かせ頭を撫でてやった。


(とりあえず薬飲ませるか…)


そう考えて一階のリビングへ足を進めようとした瞬間、くいっと服の袖を引っ張られた。
「……」

「どうした?」

「行かないで…」

「…っ…ヒビ、キ…?」

「お願い、」


一人に、しないで…


今にも泣き出しそうな声と表情でそんなことを言われてしまいオレはあたふたと慌ててしまった。

「ど、何処にも行かねぇから!だから寝ろ、な?」

こんなヒビキを見るのは初めてで少しずつ自分の理性が揺らいでるのがハッキリ分かった。
相手は病人、相手は病人と自分に言い聞かせる。

「ソウル、」

「なんだ…?」

「一緒に寝て…?」



こうして俺はこの後約2時間、自分の理性と戦うことになった。





僕と理性の攻防戦






(2010.6.17)
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