ヒビキの泣き声が山中に響き渡る。
「ヒビキ、泣いてちゃ分かんない」
「…ふぇ……ひっく…」
(泣き止まない…)
ヒビキの頭を撫でてどうしたら泣き止んでくれるのかずっと考えていた。
さっきからずっとこの調子。
連絡も無しにヒビキが突然俺の元にやってきたのは一時間ほど前。
俺を見つけた瞬間"レッドさ…ん"と言いながら泣き出したんだ。
それはもう本当に驚いた。
とにかく泣き止ませようと頭を撫でてあげたりぎゅっとしたりしてるけど泣き止む気配が全くない。
ピカチュウもヒビキの一番のパートナーであるバクフーンも心配してる。
泣くには何か理由があるんだ。
その理由を聞き出すにはまず泣き止ませないとなのに。
(どうしよう)
一生懸命ヒビキが泣き止む方法を考えていたら、
「け…んか…した、んです」
ぼそっとヒビキが話し始めてくれた。
「…ケンカ?ソウルくんと?」
「僕が…つまら、ないこと、で…嫉妬して…どうしよう」
大嫌いって言っちゃった
そう言ってヒビキはまた号泣し始めた。
ヒビキはケンカしたことが悲しくて泣いてるんじゃなくてソウルくんに"大嫌い"って言ってしまったことに泣いてるんだ。
良い子だなヒビキは。
「そっか…ちゃんとソウルくんにごめんなさいって言わなきゃ」
「で、も……許して…くれる、か…わかんな…」
「許してくれるよ」
だってソウルくんはヒビキのこと大好きなんだから。
「──ヒビキ!!」
遠くからヒビキの名前を呼ぶ声。
「ソウ、ル…」
声が聞こえてきた方を見ればそこには走ってきたのか息を切らしているソウルくんの姿が。
「ほらヒビキ、」
座り込んでいたヒビキを立ち上がらせてソウルくんがいる方向へ向かせる。
ヒビキは振り向いて俺の顔を見つめると、こくっと頷きぐいっと服の袖で涙を拭ってソウルくんの元へ走って行った。
(大丈夫かな?)
そしてしばらく二人は何かを話しあった後、笑顔になっていった。
(…よかった)
仲直りできたんだと一安心して、
(なんだかグリーンに会いたくなったな)
なんて思いながら二人のもとへ足を進めた。
好き好き大好き愛してる!
(この気持ちがキミに伝わりますように。)
(2010.4.9)