話があると言われゴールドの家に招かれたのは30分ほど前だった。
部屋に通されて向かい合わせに座りゴールドの発言を待っている間、何時もとは違う真剣な雰囲気に少しばかり緊張しているとゴールドは自分の腹に手をあてながら衝撃の一言を口にした。
「シルバー…実は子供ができたんだ」
「…………………」
何を言われたか理解するのにたっぷり30秒もかかってしまった。
子供が…できた…だと?
何の反応もない俺の顔を覗きこみながらシルバー?と名前を呼び掛けるゴールドの肩を掴み落ち着くため深呼吸。
「ほ、んとう…なのかゴールド?」
「お腹痛くて何回かえずいたりしたから病院行ってみたんだ。そしたらおめでとうございますって言われて…なぁシルバー」
この子、産んでもいいか?
少し不安げに俺を見つめて小さく呟いた。
正直、親の愛情なんか受けたことがない俺が親になんてなれるのだろうか、そんな不安が胸を過った。
…でも、
「産んでくれゴールド」
ゴールドとなら大丈夫。
そう思える自分もいるんだ。
俺が産むなと反対すると思ったんだろう。ゴールドは驚いた顔をして俯いてしまい身体も微かに震えていた。
そんなゴールドを優しく抱き寄せる。
「ゴールド…」
愛してる、と囁いて額にキスをおとす。
子供ができるんだ。まず何から準備をすればいいのだろうか。
いや、まずはゴールドとの結婚式が先か。
準備はそれからでも大丈夫だろう。
俺がいろいろ考えているとぶふっと吹き出す音が聞こえた。
「…ゴールド?」
「あははっ!もう我慢できねぇ、何言ってんだよお前!」
「は…?」
腕の中にいたゴールドが俺を指差し突然大笑いしだした。
何か可笑しいことを言ったか俺…?
「今日、エイプリルフールって知らないのか?」
腹痛ぇと未だに笑いが止まらないゴールド。
エイプリルフール…?なんだそれは。
そう言うと笑いすぎて溢れた涙を拭いながらエイプリルフールとは何か説明しだした。
エイプリルフールというのは嘘をついても怒られない日のことらしい。
ということは、
「…子供ができたというのは…嘘なのか?」
「当たり前だろ。まず俺男だし子供なんかできるわけねぇじゃん」
普通考えたら分かることだろシルバーちゃん?と言われてしまい返す言葉がない。
そうだ、いつもの俺なら冷静になって嘘だと簡単に見抜けたはずだ。
でもいきなりあんなことを言われたら誰だって信じるだろ。
それにゴールドなら本当に産めそうだし。(と口にしたらゴールドに殴られるから言わないが)
呆然としている俺を見てゴールドはでも…と呟いた。
「…本当にできたら…シルバーとの子供なら…産みたいかも…」
とか思わなくもない…と消えそうなくらい小さな声で顔を真っ赤にしながらぼそっと呟いたのを俺は聞き逃さなかった。
なんだこいつ、可愛い。
気付いた時には俺はゴールドを押し倒していた。
「…何すんだよシルバー」
「大丈夫だゴールド」
「…は?何が?」
「今から頑張ればいい。」
「ちょっ…!あん…シル、バーやめ…!」
驚いた顔をして俺を退かそうとするゴールドを余所に俺はにやりと笑って首筋に吸い付きながら一言こう言ってやった。
「可愛い子を作ろうなゴールド」
なんちってね!
(2010.4.3)