「うーん…」

さっきからギルの部屋の前を行ったり来たりの繰り返し。
何度かノックをしようと試みたけど結局ノックできずにため息をつくこと20回。

(何チョコを渡すだけにこんな緊張してるんだろ)

そう思って手に持っているチョコが入った箱を強く握りしめた。

2月14日 バレンタイン
シャロンちゃんがアリスと一緒にキッチンでチョコを作っている姿を見つけて"オズ様も一緒に作りましょう"と誘われてしまった。
最初は断ったけど手作りのチョコをあげればギルが喜ぶと言われてしまい"ギルが喜ぶなら"とチョコ作りに参加。
そしてなんやかんやありつつ─チョコが焦げたりアリスがチョコをつまみ食いしたりそれが原因でチョコが足りなくなったり─なんとかチョコが完成した。

そしてシャロンちゃんとアリスは作ったチョコをおやつにティータイム。
オレはチョコを箱に詰めギルに渡す準備をしていた。
そこでオレはあることに気付いてしまった。


(…どうやってギルに渡そう)


普通に"チョコだよ"と言って渡せばいいのかもしれないけどオレにはそんなこと言えるわけがない。(恥ずかしいからに決まってるだろ!)

そして冒頭に至るわけで。


(そろそろ渡せよオレ)

はぁと21回目のため息をついた。


「─なんだオズ、まだ渡してないのか」

「アリス…うん、まだなんだ」

ティータイムが終わったのかシャロンちゃんから解放されたアリスがオレの元にやってきた。(口元にいっぱいチョコついてるよ)


「なぜ渡さないんだ」

「いや…なんか緊張しちゃって」

オレがそう答えるとアリスは少し考える素振りをみせるとにやりと笑った。(…何考えてるんですかアリスさん)

「…よし!なら私が鴉を呼び出してやろう!」

そう言うとアリスはドタドタとギルの部屋の前まで向かうと"鴉出てこい!!"とどんどんと扉を叩き出した。
…えっちょっと待ってアリス!?


「─なんだ煩いぞバカウサギ!」

ばんっ!と勢いよく扉が開かれ中から少し疲れ気味のギルが出てきた。
書類整理に追われてるって言ってたもんね。
「オズがお前に渡したいモノがあるらしい」

そう言って"がんばれオズ"と耳元で囁かれてアリスは立ち去りこの場所にはオレとギルの二人だけ。

「…」

「オズ俺に渡したいモノってなんだ?」


オレの頭を撫でながら優しく問いかけてくれて、

どうしよう…さっきより緊張してる。


(でもアリスが作ってくれたチャンスなんだ)

(今渡さないとずっと渡せない…!)




恋するチョコレート
(ギル、あのね…!)


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