「お疲れーっす」


先輩たちに続いてシャワーを浴びて出てくると、レギュラーが揃いも揃ってまだ着替え中だった。真ちゃんも髪をわしゃわしゃと拭いている。メガネ外すとまじイケメンだよなあ。


「高尾。今日はどうするんだ」


あーあ、メガネしちゃったよ。いや、まあメガネしてても格好良いんだけどさ。


「何が?」

「帰りのことだ」

「?、リアカー、じゃねえの?」


そうだが...と言葉を濁らせる。珍しいな。はっきりモノを言わない真ちゃん。


「いいのか」


ロッカーを開けてから俺は真ちゃんの方を向いた。


「瀬戸は」


ぴしり。

そんな音が部室に響き渡り、一瞬時が止まる俺。並びにレギュラーメンバー(真ちゃん除く)。


「今後どうするんだ。俺はいない方がいいのだろう」


冷静沈着に言う真ちゃんだが、俺は疑問符飛びまくり。


「ちょ、」

「もしかしてお前、そういうことかよ」


ちょっと、と言いかけた俺を遮ったのは宮地さん。学ランを羽織って俺に向ける視線。てか、周りの先輩たちも見てるし。


「そういうことって」

「そういうことです」

「真ちゃん!?」


真ちゃんの発言に、ざわつく部室内。


「やっとかよ。遅ェんだよ」

「意外と高尾って奥手なんだな」

「奥手?んなわけねーだろ、あんなにいちゃついといて」

「それもそうか...」


一人取り残されてるんですけど?

たぶん話題の中心俺なんだけど?

全然理解できないんすけど!?!?


「何はともあれ、良かったな」

「大坪さん...あの、」


肩に置かれた手を横目に大坪さんを見上げる。


「えーっと。みなさん、何のこと話してるんすか...?」


え、何、なんで沈黙?

目の前の大坪さんを始め、先輩たちがみんな目を丸くして固まってる。あ、真ちゃん除く。奴はマイペースに荷物を整理して


「お前が瀬戸に告白したことに決まっているだろう。馬鹿め」


そして


「ちょっ......!?真っ......!?」


爆弾投下しやがった......!

パニックしてます俺。待てよそんな涼しい顔してっけどお前何言ってくれちゃってんのまじで!!!!!


「緑間はっきり言い過ぎじゃね」

「さすがだな」


いやいや何で冷静なの。何で真ちゃん誉められてんの。


「なんだ、違うのか?」


大坪さんが俺に声をかける。

真ちゃんプライバシー。俺のプライバシーは。ねえ。


「......何してくれんの真ちゃん!」

「俺が言わずとも、先輩たちは薄々気付いていたのだよ」


そーゆー問題!?

......ん?


「気付いてたっつーかな。変だと思ったわ」

「特に瀬戸な」

「いつもと違ったもんな」


また俺省られてる。てか、どゆこと。


「緑間なんか置いてさっさと帰りやがれこのリア充」


リア......?


「宮地、気持ちは分かるがもう少し生暖かく見守ってやろう」

「木村お前良い人すぎ」


リア充って...あのリア充?俺が?

むしろ独り身なんすけどね。


「ちょ、ストップストップ!」


ぴたりと止む喧騒。俺に視線集中。居心地悪ィー...。

相棒様々、完全にバレた。しょうがない。もう腹くくって認めるしかないっしょ。

あーもー、最悪...。


「もう、あの、いいっすけど。別に付き合ってないっすから。まだ返事ももらってねーし」


そう、なんだよなあ。自分で言って、改めて落ち込んだ。


「「「はあ!?!?!?」」」


え、なに。なんでこんなびっくりしてんの。

真ちゃんに至っては、ぬいぐるみを抱えたまま停止。

レギュラーがこんな間抜けな顔してんのなんて、今後絶対ないだろうなー、なんて思ってたり。


「高尾。そんなとこで気ィ遣わなくていいんだぜ?刺してやろーか?あ?」


笑顔の宮地さんが脅迫紛い。いつも以上に殺気立ってて怖い。


「いや、まじっすから!保留なんすよ!」

「なんで保留?」


俺が聞きてえよ!


「高尾、本当にまだ、なのか...?」

「ほ、本当に!まだっす!」


もー。泣きたい。

何度も言わせないでほしい。そっとしといて。お願いします。


「お前も大概馬鹿だと思っていたが、瀬戸も不器用にも程があるのだよ...」


真ちゃん。あんた自分の所為で俺がカミングアウト祭になってんの、分かってる?

つーか、みんなため息ついてるし。ため息つきたいの、俺だからね!?


「早くしてくれよ瀬戸」

「やっと解放されたと思ったのに...」

「瀬戸ー。早くしろー!」

「声!デカいっす!抑えてっ!」


瀬戸瀬戸って、いやホント外まで聞こえるから!なんか俺がみんなに相談してたみたいじゃん!それはよろしくない!とても!


「とりあえず、今日はリアカーで帰るのだよ。行くぞ高尾」


お先に失礼します、と部室を出る真ちゃん。待ってよ、俺まだ着替え途中だから。相棒がこんなにテンパってんのに通常運転か。

バタバタと制服を着て荷物を詰め込み、失礼します!と叫ぶように言うと、先輩たちはやる気のなさそうな声で送り出してくれた。



真ちゃんもだし、先輩たちまであの反応は何なんだろう。それにしても、なんか、思い出してみると祝福ムード...だった?

もしかして、とか、ある...?


「いやいやいやいや」


自惚れんのは止めとこう。答えを出すのは俺でも他の人でもない。舞羽自身なんだから。



一瞬緩んだ駆け足を速め、ことの発端となった緑間真太郎氏を追いかけた。


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