いや、前からちょっと気になってたんだけどさ。ちょっと?違う。かなり、気になるんだけどさ。
「ちょ、桜井くん......!」
「あっ、はいっ」
いつまで経っても抜けない敬語は、彼の癖らしい。ってことにして放っておくことにした。
「あの子はナニモノなのさ...?」
私の視線の先の女の子。そして青峰。
「あの人はバスケ部のマネージャーの、桃井さんです」
モモイ、ももい、桃井。
可愛いすぎだろってかなんか似合いすぎだろ!
目を引く鮮やかなピンク色のさらさらロングヘア。整った顔立ち。そして、なんと言っても、あの胸。どうやったらあんなに大きくなるんだ。半分くらい私に恵んで欲しい。切実に。
「それで、青峰さんと幼なじみらしいです」
ガタン、と音を立てて勢いよく立ち上がると、桜井くんは肩を揺らして私を見上げた。
おおおおお落ち着け、じぶん。
乾いた笑いを漏らして席に着くと、大丈夫ですか?と桜井くんが言った。
「...あんまりだいじょばない」
「ええ!スイマセン!」
君の所為じゃないよ。と机に突っ伏して言うと、えぁ、と桜井くんは変な声を出した。
腕を枕にしたまま、視線を青峰と桃井さんに向ける。コロコロ表情を変えて話している桃井さん。それを聞いてんだか聞いてないんだか、だるそうに雑誌を読む青峰。
それでも二人が作る空気は、仲むつまじい、という言葉がぴったりだった。
彼女がバスケ部のマネをしていることは、なんとなく予想していた。青峰だけじゃなくて、桜井くんとバスケの話をしていたのを聞いたことがあったから。
でも、まさか幼なじみとは。
あんな可愛いナイスバディの女の子がいて、しかも部活も一緒で。もしかしてもしかするんじゃないの。
「こ、これは、さり気に探るしかないだろう!」
気合いを入れて再び立ち上がる。心配そうな桜井くんに、行ってくるわ!と言うと、頭の上に疑問符を浮かべたのが分かった。
男の子のクセに、こいつも可愛いな...!
緊張しながらも、二人に着々と近づいていく。うあ、声も可愛い。
「あのっ!」
話していた手振りのまま、桃井さんが振り向く。奥の青峰と目があって、またお前か、と言われた気がした。
きょとんとした顔。可愛い。しかも、近くで見ると胸のデカさを改めて実感。
ってか、さり気なさゼロじゃないかこの登場は...!
「あ!」
「、へ?」
天井を指して固まっていた人差し指が、私を捉えて。桃井さんの輝く目には、私がしっかり映っていた。
「青峰くんの、彼女さん!」
アオミネクンノ、カノジョサン?
「うわあ、可愛いー!」
「え、は、?」
「おい、変なこと言ってんじゃねーよ」
ため息をついて、青峰が頬杖をつく。次の瞬間には、視界いっぱいに桃井さんの美顔。やめろ。まぶしすぎる。
「青峰くん、こんな可愛い彼女さんつくったんだねー。いつの間に?」
「だから、そういうンじゃねえっつってんだろ」
え、よく分かんない、けど。
桃井さんは何?私と青峰が付き合ってると思ってるの?てことは、この二人は付き合ってるとかじゃないってこと?
「桃井さつきです。いつも青峰くんがお世話になってます」
「いえ......って、あの」
「勝手に話進めてんなよ」
「なんでそんな今更照れてるの」
「てめェ人の話を聞け」
「桃井、さんっ」
危うくこの子のペースに持っていかれるところだった。小首を傾げる桃井さん。私が男なら、絶対彼女にしたい。
「桃井さんと、青峰くんって...その、つ、付き合ってるんじゃないの?」
「えー違うよ?」
あっさり否定される。青峰も興味なさげに雑誌をめくっていた。ってかなに、エロ本かよ。
「よく勘違いされるけど、私と青峰くんは幼なじみなだけだから。それに、私彼氏いるし」
ふふふ、と笑う桃井さん。リア充だ。幸せですって顔してる。
何はともあれ、私の早とちりだったらしい。よかった......。
「えっと...名前...」
「あ、香坂陽和乃です」
「陽和乃ちゃんね。私のことも、さつきって呼んでね」
「わ、かった」
「それで、陽和乃ちゃんは青峰くんといつから付き合ってるの?」
だから、違うって。
青峰に助けを求めるも、本人はエロ本に夢中。私としては青峰と付き合ってるなんて、とても都合がいいんだけどね。
「青峰、付き合っちゃおうか」
「遠慮するわ」
「青峰くんって、彼女に対してもツンデレなの?」
「ツンデレ......!」
こいつ、そんな可愛いとこあるのか。
鬱陶しさ全開の青峰。笑顔のさつきちゃん(巨乳)。そして、
「さつきちゃん、青峰の取り扱い方を伝授してください」
「いいよー」
「さつき!!」
最強データ少女(と、あとから桜井くんに聞いた)と手を組んだ、私。
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