あーあ。また此処にいる。
ガングロ青髪は、その巨体に似合わないベンチに横になっていた。もう部活は始まっている時間。また抜けてきたのか。この自信家め。
「あーおーみねっ。ちょっと寄りなさいよ」
あ?と不機嫌な声を出して目を開け私を捉えると、眉をひそめた青峰。
「......」
「ほらほら、ほらほら」
肩を押して促すと、んー、と言いながら膝から下をベンチから下ろし、頭をずらして座る場所を空けてくれ...た、
「おいこんな隙間に座れってか!」
「あァ、ケツでかくて座れねえか」
「こんなとこに座れる奴がいるか顔踏みつけるぞ」
「へーへー」
つーか、何でお前のために俺が動くんだよ。と言いたげに睨んでくるけど、そんなの何ともないもんね。
「また部活行かないの?」
「別に関係ねーだろ」
「あるもん。バスケファンとしては見過ごせません」
「黙れ」
「黙らん」
そう。私は青峰の友達である以前に、バスケが大好きなんだ。だから青峰がスーパーマンみたいに上手いって聞いて、鳥肌が立った。
こいつがプレーするところをみたい。単純にそう思った。
「つーかさ。お前、人のこと言えんのかよ。自分もサボってんじゃん」
「残念だけど、私はしっかり帰宅部をまっとうしてるのですー」
チッと短い舌打ちをひとつ。
「青峰」
返事はないけど、本題に入ろう。バイトの時間も来ちゃうし。
「メアド教えて」
「ヤだね」
即答しやがった。
「友達じゃん」
「お前が勝手に言ってるだけだろ」
「この前パンあげたのに」
「そりゃどーも」
「そのお返しってことで!」
嫌そうな顔を向けてきたので、満面の笑みを返してやった。すると、ため息をついてからズボンのポケットを弄って。
「ん」
「え、いいの!?」
「じゃあ無理」
「いえありがたく頂戴いたします!」
やったあ...!本当はもうちょっと手こずる予定だったけど、うん、嬉しい。
無造作に差し出された携帯を受け取り、青峰のアドレスを自分のに送る。少し考えてから、自分の分も青峰の携帯に登録しておいた。
こいつ、メールしても登録してくれなさそうだもん。
「ありがと」
「あァ」
「ふふ、」
「んだよ気持ち悪ィ」
携帯を返しながら思わず笑いが漏れてしまって。
「だって、嬉しいから」
そろそろ行かなきゃマズいな。立ち上がると、そっぽを向いていた青峰がちらりと私を見た。
「メールするね」
返せよ、と付け足すと、無言でひらひら手を振られた。早く行けってことね。分かった分かった。
青峰に背を向けて歩き出す。携帯を握り締めると、やっぱり自然に頬が緩んだ。
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