もやもやもやもや。
彼が触れた熱が、引き寄せられた腕の感覚が、前を歩く背中が、未だに渦のようになって心臓を高鳴らせている。


酒場に着くとクルーはちらほら集まっており、何人かは既に飲み始めていた。店の一番奥のテーブルに真っ直ぐ向かい、ローとシャチは腰を下ろした。ベポと手を繋いでいたナマエは絡んできたクルーと少し話し、それから遅れて彼らのいるテーブルへと向かう。残るあと一席にはこれから来るペンギンが座るだろう。


「ナマエは今日飲むのか?」


マスターに酒を頼んでいたシャチが気を遣ってナマエに声をかける。強くはないため、大体飲まないか、飲んでも一杯程度で済ませる彼女に無理やり酒を勧めるような者はいない。こんな些細なことでも大切にされているのだ。


「今日は少し付き合え」

「珍しいっすね、勧めるなんて」

「そういう気分なんだよ」


横から口を出したローによって、ナマエの分の酒が追加で注文される。大丈夫?と心配するベポにナマエは微笑みを返した。


「無理やりたくさん飲ませる気はねえよ」


ナマエを横目に見ながら長い脚を組み替える。たまにはいいだろ?と言っているようなニヒルな表情。はなから断る気はないが、なんだか言われるがままというのも悔しい気がしてしまう。

こんなとき声が出せたら、ほのかに熱を帯びた頬を誤魔化すための冗談が言えるのに。そんなことを考えながら、ナマエはこっそりと「しょうがないなあ」と口を動かした。




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