(まさか......本人に会うとはな)


ローは船長室のソファにどさりと腰を下ろした。シャワー上がりで髪の毛から落ちた雫がその頬を伝う。

ソファが濡れてしまうことも気にせず、ローは頭を背もたれに付け、天井を見上げた。ぼんやりと思い出すのは、先程までの出来事。





船に戻ると言って酒場を出たロー。夜風がひやりと体に当たる。


(あいつは...もう寝たか)


脳裏に浮かんだ少女の顔。まだ声は戻らないが、しっかり食事を取るようになったからか、出会った頃よりも体調が安定してきていた。

初めは海賊に抵抗を感じていたようだったが、ベポやシャチと打ち解け、ローとも診察の時には少し話すようになり、最近はペンギンとも会話をするらしい。何はともあれ、ハートの海賊団には馴染めてきたということだ。


(だめだな。ここの所、あいつの心配ばかりだ)


ふっと笑いが零れる。クルーのことは気にかけているほうだが、他人であるナマエのことまでこんなにも自分が考えるとは。


『......?なんだ?』


ローはスッと目を細めた。

何か、海岸の方から感じる。


(まさか...、まさか、な)


この感じに、覚えがあった。

少しずつ近づいていくと、徐々に潜水艦が見えてきて。そして、


『っ!くそっ、やはりそうだったか!』


ローは走り出した。視界が開けたとき、その目に写ったのはピンクを纏った男と、首を締め上げられるナマエの姿だった。





「分からねえ」


何故あの男は、無理矢理にでもナマエを連れて行かなかった?ドフラミンゴの力ならば、いくらでもそれは可能だったはずだ。なのに、あの男は。


(それに、気づいていたはずだ。俺がナマエの側にいると)


この船も、あのつなぎも。ハートの海賊団の象徴と言えるものばかり。


(俺のことを、嫌と言うほど知っているんだ)


それでもドフラミンゴが自分の元にナマエを置いて去っていった、その真意は何なんだ。




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