口は動いたはずなのに、彼女の声が発せられない。ローは眉間に少し皺を寄せ、ベポは目を丸くする。少女は目を大きく見開きながら、自身の喉に触れて俯いた。
「そんな訳ないよ!俺にはこの子の叫び声が聞こえたんだ!」
ベポはローに向かって言った。
「あぁ、分かっている。...お前、」
目を細めて少女を見るロー。
「本当に話せないのか」
目を伏せていた少女の瞳が、ローを捉える。彼を震える瞳で真っ直ぐ見据えた彼女は、首をこくりと動かした。
「そうか」
ベポ、とローが名前を呼ぶ。
「紙とペンを持って来い。とにかく話をしないとな」
「うん...」
困ったような顔をしながら、ベポは医務室を出て行った。
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