「ペンギンか」
ローに声をかけたのはペンギンだった。後ろから歩いてきた彼は、ローに向き合うようにして立ち止まる。
「船長、俺は反対ですよ。怪我を治すのは医者の務め。あなたが治療したことに文句はありません。でも、船に乗せようっていうなら話は別です」
帽子の下から、じっとローを見つめる。
「別に乗せようなんて思ってねえ」
「彼女の目が覚めたら、すぐ降ろすつもりだと?」
「何が言いたい」
背の高いローは、ペンギンを睨むように見下ろす。
「彼女は一体何者なんですか」
「さァな。捨てられてたのを拾ってきたんだ」
知るわけねぇ、とペンギンから視線を外し、医務室の方を見る。その口元は、うっすらと弧を描いていた。
「その顔ですよ」
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