「なあ、ベポとナマエはいつもそうやって手繋いで歩いてんの?」

「?、そうだよ!」

「それじゃあナマエが筆談できないじゃん。会話になんなくってつまんなくねーの?」


シャチは眉を寄せてナマエの顔を見た。まあ、お前らが仲良しなのは分かるけど、と呟きながら。ナマエは助けを乞うようにベポと目を合わせた。


「あれ?でも、俺たちお喋りしてたよね?どうやってたっけ?」

「いちいち手離してたとか?」

「それはないよ。...ん?どうしたの?」


ナマエがベポに向かって口を開け閉めしながら指でそれを指し示した。暫くして、じっと向き合いながら首を傾げていたベポが、ああ!と声を上げた。


「そっか!キャプテンがいるときは声出す練習してたんだもんね!だから紙もペンもいらなかったんだ!」

「口パクってこと?」

「そうだよー。俺は全部は分かんないんだけど、キャプテンはぜーんぶ分かっちゃうんだ!すごいよねえ」


船に残っている彼のことを想像しながらにこにこと笑うベポ。はにかむナマエの隣では、シャチがなるほどな、と頷いていた。

俺と話すときはメモを使うな。ローがそう言ってから、二人の会話は読唇術になった。不思議なくらいに彼はナマエの言わんとすることを理解できていて。そのお陰か、ローいわくナマエの症状も回復傾向にあるらしい。とは言っても、まだ声が元通り出るようにはなっていない。

ベポの手をゆるりと解き、ポケットからメモを取り出す。


“シャチが一緒だと賑やかだね”

「だろだろー!」

「そうだね。キャプテンはあんまり喋らないもん。時々ナマエの言いたいことを読み取ってくれるくらいかなあ?」

「そうだよなー。船長は口達者ってほどペラペラ話す人じゃないからな」


ま、話はうまいけど。色んな意味で。

シャチの言葉に三人で小さく笑う。ナマエは再びベポと手を繋いだ。暖かく包み込んでくれる彼の手に目を細める。親指でふわりとその毛並を撫でた。




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