店自体は小さめだったがなかなか品揃えは豊富なようだ。ナマエはくるりと店内を見回した。ベポが奥へ入ろうとすると、うしろから入ってきたローが呼び止めた。


「ベポ、お前は少し後ろにさがっておけ」


えーと不満そうにベポはローを見たが、確かに店員たちがこちらを見る視線はベポに集まっており、目立っているのがよく分かった。

しぶしぶベポがナマエの手を離してうしろに行くと、女の店員が声をかけてきた。


「いらっしゃいませ。どんなものをお探しですか?」


どう考えてもこの台詞はナマエに向けられたものだが、どう考えても彼女の視線はローに向いていた。仕方ない。すらりと背が高く良い顔立ちをしている彼が、歩いていても注目を浴びてしまうことは先程から承知していたことだ。


「こいつに合う服を持ってきてくれ。セットで幾つか買う」


そんな色目の数々を気にもとめない彼も承知の上だ。ローはナマエの頭にぽんと手を乗せて店員に言った。びっくりしてナマエが見上げると、ローは笑みを浮かべてこちらを見た。

そんな光景を見て店員は少しむっとしながら店を物色していた。それをローは何とも思わず近くの服を見たりしているが、ナマエはそわそわしながら店員が来るのを待っていた。


「お待たせしました」

「!」


目の前に置かれたのは十セットくらいの服や靴で、ワンピースのような女の子らしいものからカジュアルなものまで揃っていた。


(わあ…)


ナマエにとってこんなに綺麗でおしゃれな服を見るのは久しぶりで、思わず見とれてしまった。目をキラキラさせているその横顔を見てローは満足げな顔をしていた。


「全部買う。いくらだ」


ローの声にばっとそちらを向くナマエ。この中から選ぶのだとばかり思っていたので、全部と言ったことに驚いたのだ。ナマエは慌ててポケットからメモを出し、ローに突きつけるように見せた。


「“全部なんて悪いです”?」


うんうん、と頷くナマエ。いきなり船に乗せてもらって看病してもらった上に、こんなにお金を使わせるなんて有り得ない。すると、ローは鼻で笑った。


「オレを舐めるな。懸賞金2億のルーキーだぞ?」


目を丸くしたナマエを見てニヤリと笑ったローは、店員に向き直った。


「いくらだ。早く包んで渡せ」




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