シャチがチェストの上に折り畳んで置いてある服を見た。
「お前、まだこれ着んのか?」
ムリだろー。
シャチはそういって服を広げた。元々白地の服だったのだろうが、洗濯しても汚れは綺麗に落ちなかった。ところどころ破れていたり、擦れたりしている。確かに、着続けるのは難しいだろう。
ナマエはシャチの前に掲げられたそれを一瞥して、メモを手にした。
“着られないよね”
「難しいだろ、」
だよね、と言うように切なげな顔でナマエは俯いた。答えたシャチもその雰囲気から口を噤んだ。
“でもとっておきたい”
そう書いたのを見せながら、ナマエは微笑んだ。
「大事なものなの?」
ベポが問うと、ナマエは頷いた。
“大切な人にもらったの”
「......それが、ナマエの会いたい人?」
ナマエは再び頷いた。
その相手について、まだ何も聞いていない。でも、なんとなく深入りしてはいけない気がしていた。それはシャチやペンギン、それにローも感じているのだろう。気になっていても誰も触れなかった。
(ナマエはきっと、話してくれる)
今はまだ、癒えない身体を回復させるのが優先。
ベポはシャチが畳んだそれを受け取って、再びそっと置いた。
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