ズキズキと痛む腕。それに意識を呼び起こされるようにうっすら目を開ける。


「おねえちゃん...っ!」


おねえちゃん、と何度も呼びながら頬に触れる小さな手。ナマエの視界一杯に、ひとりの男の子の顔があった。


「おきた?いたい?だいじょうぶ?」

「此処は......っ、なんで君がいるの...!?」


寝ていた上半身を勢いよくおこしかけ、腕に走る激痛に顔をしかめた。見れば、先程の銃撃で流れた血が黒くパーカーを染めていた。


「どうして...!」


痛みに耐えながらも頭は混乱していた。此処はどこなのか?あの海賊たちは?何故さっきの店の子供が一緒にいて......


「おね、ちゃん...っ」


ふるふると全身が震えている。涙が今にも溢れそうな少年を、ナマエは咄嗟に抱き締めた。刺し傷のない方だとはいえ、全身強打していたんだったということを、ミシリと軋む体に思い出す。


「怪我...!怪我は!どこか痛い!?」

「いたく、ない」


緊張が少し和らぐ。良かった。何もされてはいないらしい。ナマエの体にしがみつく小さな体躯を、自分の痛みをかき消すかのように強く抱き締めた。


「あの海賊たちは?」


ナマエが小さな声で尋ねると、少年は顔を上げた。


「わかんない。つれてこられて、それで、ぼくとおねえちゃんをここにいれて、それで、」

「分かった。......ごめんね」


もう一度、頭を抱えるように引き寄せた。巻き込んでしまった。こんな小さな子を、自分の無力さ故に、巻き込んでしまった。助けようとして、飛び込んでいって。どう見ても格上の相手に、無鉄砲にも程がある。

ナマエはごめん、とまた零した。


「いたい?」

「え?」


大きな瞳がナマエを捉えて。


「うで、だいじょうぶ?」


大丈夫、とはとても言い難いのが正直なところだった。確かに、いつもの鍛錬ではそれなりに切り傷を負ったりだとか、吹っ飛ばされて体に痣を作ったりだとかしていたので、そういう免疫は付いていた。

つもりだった。

今回は慣れない、というより初めての銃弾だったので、実際現段階で患部がどうこうは分からないが、ひたすらに激痛が走っている。流血は止まっているものの、大量に出たのか、心なしか貧血も感じていた。




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