ナマエはブラシ片手に汗を拭った。見上げれば、雲ひとつ無い青空。太陽が容赦なく甲板に降り注いでいた。
「あっつ......」
白ひげ海賊団に来てからクルーとして、ビスタに戦術を教えてもらいつつもしっかり雑務もこなしていた。甲板掃除をしていたナマエは、額から落ちた汗を再びシャツの肩口で拭う。
「休憩ー」
ブラシを壁に預け、その場に座り込んだ。視界には所々で同じく掃除をしている同隊のクルーがいた。
「おーい!お前、サボってんじゃねーよ!」
「レオよりもいっぱい働いてましたー。サボりじゃないし、休憩だし!」
遠くからレオが叫んできた。さっきから喋ってばかりだったくせに。ナマエが思っていると、年上のクルーがレオの頭を叩いているのが見えた。
「覚えてろよ!あとで叩き切ってやっからなぁ!」
「こっちのセリフだ!」
このあと待つ鍛錬は、ナマエとレオの一番好きな時間。お互い口喧嘩しながらも、共に力をつけてきていた。
「喉、渇いたなぁ...」
ちら、と食堂のドアに目をやる。この時間はおそらく、あの男はキッチンにいない、はずだ。3時のおやつでも作っていない限り。
「ありえないっしょ。変態がお菓子とか」
フン、と鼻で笑う。ナマエは立ち上がってブラシを手に取ると、掃除を再開した。
少ししてから先輩クルーの声がかかり、わらわらと片付ける。
「レオ、ナマエ」
「「はい」」
話をしていた2人は同時に振り返った。声をかけたのはビスタだった。
「鍛錬は少し休んでからだ。1時間後に、いつもの場所に来い」
「でも隊長、こいつさっきサボってましたよ?」
「サボってないっつってんだろ、馬鹿」
「ぅおわっ!ってーなぁ!」
「はんっ。自業自得だ」
ナマエに踏みつけられた足をさするレオ。
「お前が言えることじゃないだろう、レオ?」
え、とビスタを見上げてレオは固まった。ふっと笑ったビスタは、目の前の2人の肩に手を乗せた。
「とにかく、休んでこい。な?厳しくやってやるから」
ニヒルな笑みを残し去って行くビスタ。ナマエとレオは互いをじいっと睨みつけた。
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