「え......と、」
今ナマエは白ひげの船上におり、周りをクルー達に囲まれていた。目の前には白ひげが、横には元の姿に戻ったマルコがいる状況だ。
マルコの背に乗った後、ナマエはずっと目をつぶっていた。船にたどり着くまでは浮遊感と風の感覚が絶えずナマエの恐怖心を煽った。知らないうちにマルコにしがみつく力が強くなっていたらしく、途中からクツクツと笑われていた。
「ナマエ、よく来たなァ」
白ひげが声をかけてきた。我ながら凄い決断をしたと思う。大嫌いな海賊の懐に、自ら飛び込んだのだから。ナマエはなんと答えれば良いのかわからず、口をぎゅっと噤んで白ひげを見上げた。
「まぁ、そんなに警戒するなよい」
ナマエの様子を見たマルコが言った。
「そうだ。お前は今日から俺の娘だ、ナマエ」
「娘......」
「あァ。俺たちは家族だ」
マルコも周りの野郎共も、お前の兄だ。
そう言って白ひげは笑った。ナマエがぐるりと見回すと、確かに男だらけだ。笑みを浮かべている者もいるが、中には怪訝そうな顔つきの者もいた。
「......変態男」
ナマエの視界に入った怪訝そうな顔つきの男──それはサッチだった。ナマエの中では“クルアに手を出そうとした奴”として、完全に敵として認識されていた。
「オイコラてめぇ!今何つったぁ?!」
ナマエの呟きと冷たい視線に反応したサッチは、ずかずかと歩み寄った。
「変態男」
「誰が変態だぁ!!」
キッと睨み合う双方。それを見て白ひげは笑い声を上げ、隣のマルコは馬鹿やろうが、と言ってため息をついた。
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