雲ひとつない青空の下、モビーディック号船内は久しぶりに活気だっていた。長らくいたこの島を発つ朝、皆準備をしていたのだ。
「来なかった、な」
「......」
1人甲板から島をじっと見ていたマルコの隣にサッチが並び、同じ様に目を向けた。
「......きっと来るよい、あいつは」
昨日白ひげがナマエと話をして船に戻ってから、隊長たちは事情を聞いた。皆驚いていたが、誰もが受け入れることを了承していた。文句を少し言いつつも、面倒見のよいサッチはナマエのことを気にかけているようだった。
マルコが呟くとサッチも、そうだな、と返した。来るかなんて分からない。というより、来ない確率の方が高いのかもしれない。しかしマルコは、ナマエはこの船に乗るとどこかで確信していた。全く根拠のない自信だが。
「マルコ隊長!サッチ隊長!」
そろそろ出航です、
クルーの声に2人は振り向き、了解の意を示した。クルーが去った後サッチはマルコの肩を軽く叩き、中央へと歩いていった。再び島の方へと視線をやると、マルコはふう、と息を吐いた。出航に向けて一層賑やかになる声をBGMにして暫くそうしていると、横から大きな足音がゆっくり近いてきた。
「、オヤジ」
「来ねぇか、ナマエは」
「......まだ、な」
マルコが答えると、白ひげは少し笑った。
「初日から遅刻たぁ、手の掛かる妹ができたなァ。マルコ」
「......まったくだよい」
妹、か。今までにはない響きだとマルコは思った。船内にいる女といえばナースだけで、戦闘員としてのクルーにはいない。しかし、この場合ナマエは“戦闘員”扱いなのだろうか?
1人考えていたマルコを見て白ひげはにやりと笑い、身体を船内に向けた。出航準備は整っていた。
「野郎共ォ!出航だァ!!」
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