「悪いねい」


マルコはテラスに向かいながら、声をかけた。視線の先のクルアは、1人外を眺めていた。マルコに気づいたクルアは振り返った。


「あいつら」


立てた親指で自身の後方を指すマルコ。その先には酔いつぶれて雑魚寝するクルー達。その中にはサッチやエースの姿もあった。白ヒゲの声がかかってから再び宴は賑わいを取り戻し、結局日付が替わるまで続いた。


「構いませんよ。いつものことですから」


クルアは笑顔でそう言って、また視線を外に向けた。マルコもその隣に並び手すりにもたれて、同じ様に外を見た。2人の目の前には、どこまでも続く海。海岸沿いにあるこの店のテラスからは、何も遮るものなく一望できた。夜明け前の海は独特の深い青の美しさを放っていた。
暫く沈黙が2人を包む。マルコは隣のクルアをふと見やった。クルアは真っ直ぐ海を見つめていた。しかし、


(…また、だ)


その瞳は悲しそうに揺れていた。マルコ達にカイルを紹介したときも、ナマエを妹だと言ったときも、同じ様な目をしていたクルア。


「...クルア」


沈黙を破ったのはマルコ。クルアはちらっと彼を見てはい、と言うと再び海を見た。


「...お前らは本当に...受け入れられているのかよい...海賊を」


両親を海賊に殺された。それは彼ら兄弟にとって永遠に変わらない事実。それでも海賊と関わり続けるのは辛いことにかわりない。クルアとカイルの言葉を聞いてから、マルコは不思議に思っていた。


「そうですね...。辛くない、ワケじゃありません。初めは海賊を迎える度に震えが止まりませんでした。笑顔だって向けられなかった」


思い出すように言葉を紡ぎ出すクルア。マルコは海を見ながら、彼女の言葉に耳を傾けていた。




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