「お前の相手は俺だ。こいつらに手ェ出すのは俺を倒してからにしな」
「テメェ...」
相手が間合いを取るその隙に背後の二人に目をやると、ナマエは少年にさらに覆いかぶさるようにしていた。その背中には斬りつけられた跡。出血も酷く、辛そうに息をしているのが明らかだった。
「大丈夫か」
目があった少年に問うと、震えながらこくりと頷く。
「でも、おねえちゃんが...っ」
「あァ......あと少しの辛抱だ。お前、そいつのこと、守ってやってくれるかい」
少年は目を丸くした。それから涙を堪え、力強く返事をした。マルコは少年が小さな手で抱きしめるのを見届けて、敵と向き合った。
「お前らがやったことは絶対に許さねェ。こいつらを人質にしたところで、俺たち白ひげ海賊団が負けるはずがない。むしろ怒りをさらに募らせただけだ...!」
マルコの迫力に、海賊は一歩下がって身構えた。
「覚悟しろい」
「こっちの台詞だァァァア!!」
勢いよくマルコへと刃先を向けて突撃する。眼光を鋭くしたマルコは翼をさらに輝かせた。
少年のぬくもりを感じながら、ナマエはその光景を脳裏に思い浮かべていた。彼の戦っている姿をこの目で見たい。そう思いながらも身体は限界を超えていた。刀の鋭い音のあとに男の悲鳴が耳に届く。少年が震えるのをそっと片腕で緩く抱きしめた。
ーーー終わったんだ。
背後の静けさからそれを感じ取った。
「ナマエ」
よく頑張ったねい。
降ってくる穏やかな声と、全身に感じる温かさに、ナマエは意識を手放した。
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