フードの下から鋭く男を睨むナマエ。男はニヤリと笑った。
「こんなガキに背後を取られるたァな」
「なめんなよ...!」
ナマエは踏み出し、男に剣を振り下ろした。男が抜いた剣と剣が交わり、鋭い音が響く。
「よく耐えられるなァ。お前」
ギリギリと力を込めてくるが、普段男ばかりを相手にしているナマエにとっては大したことはなかった。
「おらよ!」
突き飛ばされ、ナマエは地面を削りながら着地した。すぐに体勢を立て直し、ナマエは再び男と剣を交える。
「なかなか良い腕っ節してんな。どこの奴だ」
「うるせ...っ」
あ?と小さく呟き、男は口の端を上げてナマエを見た。
「白ひげンとこの奴か」
「!」
男の視線をたどると、ナマエの目に入ったのは柄に刻まれた白ひげのマーク。その瞬間に、男はナマエの手首を掴んでひねり上げた。
「細ェ体してんな。食わせてもらってんのか?ん?」
痛みに唇を噛み締める。ナマエは男の足を目掛けて蹴りを入れた。しかしそれにびくともせず、男はナマエを投げ飛ばした。
「───ッあァ!!!!」
壁に激突した衝撃で派手に木片が飛び散る。強く打ち付けた背中に激痛が走る。苦しそうな声を出したナマエに、男はにやりと歯を見せた。
騒ぎが一気に大きくなり、野次馬たちも混乱し始めて周囲が更にうるさくなった。この場から離れようとする人で溢れかえる。
剣を頼りに立ち上がり、ナマエは近付いてくる男を見据えた。若干ずれたフードを引っ張り、深く被り直す。
「白ひげの坊ちゃんよォ。どんなに威勢が良くたってそんなひ弱な身体じゃあやっていけないぜ?」
「っ...はぁ...、力が全てだと思ってるヤツには負けないね...っ。少なくともあの海賊団はそういう考えだ」
「ほーう。そうか。そんな甘っちょろい教育受けてるから俺に一人で楯突くような馬鹿が育つんだよ!」
振り下ろされた剣に反応し、顔面に近い位置で受け止める。ギラギラした男の目にナマエは吐き気を覚えた。
「お前の仲間はどうした?誰が迎えに来てくれる?不死鳥か?火拳か?」
交える刃がギリギリと軋む。抵抗する力がなくなっていくのが分かる。このままでは力負けするだろうことも。
(どうする...っ)
一か八か。
失敗すれば、相手の刃が身体に突き刺さるだろう。
(やるしかない!)
ナマエは剣を握る力を一瞬緩めた。降りかかってくる刃。自分の剣で上手く滑らせながら身を翻す。そのままナマエは男の脇腹に回し蹴りを入れた。
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