「...この船どんだけ広いの!」
ナマエは歩きながら呟いた。廊下を歩き始めてまだそんなに経ってはいないが、普通ならそろそろどこかへ出てもいいだろう。両側にはクルーの部屋なのであろうドアが所々あり、まるでホテルのようだった。
「おっ。ドアだ、」
小走りに駆け寄ってドアノブに手をかけ、ナマエは停止した。
(これを開けたとして、誰かの部屋だったら......)
「まずい、よね…」
ドアノブから手を離し、ナマエは耳をぴったりとくっつけた。神経を集中させ、向こう側の様子をうかがう。
「何やってんだ?」
「っ!」
突然背後でした声にびくりと体を震わせ、ナマエはバッと振り返った。
「どーしたんだよ?行かねーのか?」
声をかけたのはエースだった。まだ全員の名前が分かっていないナマエは、隊長の中にいたな、としか思わなかった。
「おーい、」
「!っと、あ、」
びっくりしてボーッとしていたナマエは、顔の前でエースが手をひらひらさせたことで我に返り、サッとドアから離れて横の壁にぴったりとくっついた。
「ん?お前、甲板に行くんじゃねーのか?」
その通りだ。でも、場所が分からなくて、ドアの向こうの様子をうかがっていました、なんて言えない。明らかにさっきのは不審な行動だったとナマエは思った。
「そーか!おめー、場所が分かんなかったんだろ!」
なんだそんなことかー。
そう言ってエースはにかっと笑った。
「ここ抜けたらすぐだ。俺も行くとこだからよ、一緒に行こーぜ!」
ナマエが固まっていると、ドアを開けたエースはこちらを見て早く早く、と手招きした。人懐っこい笑顔をする人だな。そう思いつつ、ナマエは慌ててその背中について行った。
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