1人部屋に残されたナマエはベッドに腰掛けた。


「はぁ...」


来てしまった。本当に海賊の船に乗ってしまったんだ。急な展開すぎて旅行にでも来たような気分になるが、此処は間違いなく海賊船だ。

ナマエは手元で短剣を遊ばせながら、先程のことを思い返していた。我ながらよくお礼の言葉が出てきたと思う。マルコが部屋から出て行ったときのことだ。なにかあったらお礼を言うことは忘れない。それは両親によく言われていたことだ。でも実際に“あの”海賊相手に言ったことには、自分でも驚いていた。


「......ヘンな感じ」


この船に乗ってから、ずっと彼らのペースに流されている気がする。クルクル回していた剣をぎゅっと握りしめた。そうは言っても海賊は海賊。長年嫌ってきた本能が消える訳はなく、やはり今も気を張った状態だった。


「さてと、」


ナマエは勢いをつけてベッドから立ち上がった。来てしまったものは仕方ない。自分は新入り扱いだし、此処でのルールを守ることはやむを得ない。先程の話し合いの終わりに、ナマエは荷物をおいたら甲板に来るよう言われていた。

ナマエは手首につけていたゴムで髪の毛を一つにまとめた。やるからにはやってやろう。よしっ、と小さく気合いを入れて、部屋のドアを開けた。


「......で」


ナマエはドアを開けた状態でかたまった。


「どうやって甲板まで行くの!?」


右を見ても左を見ても、ずっと廊下が続いていた。マルコに案内されたときは緊張もあって道を覚えようなどという気は全くなく、ただキョロキョロしながらついて来ただけだった。これでは行きたくとも行けないじゃないか。


「......取り敢えず歩くか」


誰かにあったらその人に聞けばいい。


「......変態だけはカンベン」


ナマエはマルコと来たであろう方向へと踏み出した。




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