「お前、剣術は習ったことがあるのか?」
白ひげがナマエに問う。そんな経験があるわけもなく、ナマエは首を振った。
「あの短剣は持ってきたのか」
白ひげに言われ、ナマエは腰に下げていたその鞘をぎゅっと握りしめた。持って来るに決まっている。これだけが自分の身を守る唯一のもの。唯一信じられるものだ。
「......持ってきた」
一呼吸置いてから、小さく答えた。
「そうか。ビスタ、」
ナマエの返事に満足げにすると、隊長の中の1人に声をかけた。反応を示したのはシルクハットと髭が特徴的な男。なんとなく店で見た覚えがあるな、とナマエは思っていた。
「こいつは見込みあるか?」
「あァ......鍛えたら良い剣士になるさ」
ナマエと目を合わせたまま、ビスタは答えた。本人としては剣士になろうなど考えたことがなかったので、彼らの会話についていけていなかった。その間にも他の隊長が意見を言ったりと、着々と話が進んでいく。
「じゃぁビスタ。お前のところで面倒見てやってくれ」
白ひげが話をまとめたときだった。
「あっ、あのっ、」
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