「......!」


白ひげの声が辺りに轟いた。そしてまた静寂が流れ、さざ波の音だけが2人を包んだ。


「この世に産まれてこなければ良かった命なんてねェ!ガキが生意気な口叩いてんじゃねぇよ!お前は望まれて産まれてきたんだ!」


白ひげはナマエを見つめながら強い口調で言った。ナマエの涙は止まっており、頬には跡が付いていた。ナマエは唇をぎゅっと噛んで白ひげを見ていた。正確に言うと、目を逸らすことを許されない気がしていた。
ナマエの様子を見て白ひげがふっと緊張を解いた。


「それに、お前は愛されているだろう。姉にも、兄にも、両親にも」

「......」


優しく白ひげは言って、続けた。


「クルアだってお前に事実を伝えるのは辛かっただろう。わかってやれ。それでもあいつらはお前に“大切な妹だ”と言わなかったか?」


一瞬はっとした表情になったナマエ。それを見て白ひげは口の端を軽く上げた。


「クルアがどうして今お前に伝えたのか、どうして俺達に預けようと思ったのか、よく考えてみろ」


白ひげは立ち上がった。


「ナマエ。もう一度言う。
俺の娘になれ。一緒に海に出る覚悟ができたら、明日の朝荷物をまとめて島の裏の海岸へ来い」


笑みを残して白ひげは来た道を戻っていった。残されたナマエはその大きな後ろ姿を見つめていた。
いつの間にか心に渦巻いていたものがなくなり、今はただ白ひげの言葉が響いていた。


「......」


ナマエは空を見上げた。
そこには優しい光を放つ月がぽっかりと浮かんでいた。




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