ナマエはふっと笑った。全てが物語っていたではないか。疑いを捨てて、1人安心して過ごしてきたのは自分だ。皆事実を隠していただけなんだ。
「......ばかみたい」
そう呟いて、立てた膝に顔を埋めた。
海賊の子供。大嫌いな、両親を殺した、海賊の子供。
ぐるぐると姉の声が、自分の声が頭を渦巻いた。
「ここにいたか」
「......!!」
誰もいなかった海岸に男の声が響いた。ナマエが顔を上げると、横には白ひげが立って見下ろしていた。驚くナマエをよそに、白ひげは隣に腰を下ろした。
「ナマエ、全て聞いたんだろう」
「......!知ってたのか...!?」
目を丸くして白ひげを見上げるナマエ。白ひげは何も言わず、ただ海を見ていた。ナマエも海に視線をやった。
「何故お前がここに来たのか、分かるか」
「......?」
「お前が海賊の血を引く者だからだ。だから、無意識に海を目指した」
白ひげの言葉にナマエは身震いした。この男は何でも知っているのか。隣にいるのが怖くなった。
「......お前に何が分かる」
絞り出した声でナマエは言い、立ち上がって白ひげの方を向いた。
「あたしは......お姉ちゃん達が...お父さんとお母さんが恨むべき、海賊の子供だ...!何も知らずに悠々と生きてきたあたしを......お父さん達を殺したのはあたしなのに......」
止まらなかった。言葉が、感情が、どんどん溢れてくるようにナマエは叫んだ。いつの間にか流れ出した涙で顔はぐちゃぐちゃだった。
「あたしがあそこに預けられなければっ......あたしなんか、産まれてこなければ良かった......!!」
そう言った途端に、白ひげがナマエを見た。鋭い瞳でナマエを見た。
「アホンダラァァ!!」
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