「何言ってんの...?当たり前じゃん」
ナマエは笑ってみせた。しかしその顔は自分でも分かるくらいに強ばっていた。
「当たり前よ。ずっと、いつまでも、当たり前だから」
クルアはうまく笑えない妹を見て、ふっと優しく微笑んだ。そしてまた真剣な表情になった。
「ナマエ。あなたは、私達の妹。血のつながっていない、妹なの」
(だからこそ、聞いて欲しい)
「......!?」
(受け止めて欲しい)
「あなたの親は、お父さんとお母さんじゃない。本当の親は......海賊」
心臓が潰れるかのような、止まったかのような、言葉にならない衝撃がナマエを襲った。カイルもナマエを見ていたが、その表情はどこか辛そうだった。クルアはナマエを見ながら、話し出した。
「私達が物心ついたばかりの頃、ナマエはうちに預けられたの。お客さん...海賊が、赤ちゃんだったあなたを。まだ名前もついていないような、産まれたばかりの赤ちゃんだった。名前はあなたの両親と、お父さんお母さんでつけたの。それからずっと、ナマエは私達の妹として生きてきた。
あたしもカイルも「なにそれ...!!」
クルアの話を遮ったナマエの声は震えていた。
「急に、なんなの......!?あたしの親が...海賊って...!?そんな...じゃああたしは今までずっと、一人で勘違いして生きてきたの!?2人を、本当の兄弟だと思って...お父さんとお母さんを、本当の親だと思って...!!」
「ナマエ!」
カイルが混乱しているナマエを止めにはいるが、それを遮るようにして立ち上がった。
「訳分かんない......!!お姉ちゃんも、お兄ちゃんも......どうかしてるよ!!」
ナマエはそう言うと駆け出し、店を出て行った。
「、姉さん......」
残されたクルアとカイルは、妹の出て行ったドアを見つめていた。
(あたしたちにとって、大切な、たった1人の妹だから)
前 次
back