ナマエはそう言い放って厨房へと駆け込んだ。
「......強ェ女だよい」
「アァ......強すぎるくらいだ、ガキのくせに」
マルコの呟きと白ひげの言葉の真意をクルー達が知るのは、もう少し後の話。
──────────
「......!」
厨房に入ったナマエは一人、ドアを後ろ手で閉めてから背中を預けて立っていた。
どういうことだ。奴らは自分の敵。海賊。嫌われていると知りながら、なぜ自分を気に入ったと言うのか。なぜ海に出ようと誘ったのか。
なぜ自分は今、胸が高鳴っているのか。
(ありえない......)
様々な疑問と感情、そしてあの時の白ひげの言葉と瞳が脳裏を駆け巡っていた。
「ナマエ、」
「!......お姉ちゃん...」
そうだ。自分が厨房に行っているように言ったのだ。クルアの顔を見て、ナマエは少し冷静さを取り戻した。クルアの隣にはカイルもいた。
「さっきの...」
「聞こえてたわ。全部」
お姉ちゃん、あたしはどこにも行かないから。
そう言おうとしたナマエは、口を開けなかった。その前にクルアがそれを制したのだ。
「ナマエ...あなたに大事な話があるの」
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