「周りの大人たちも、無理に続けることはないって言ってくれました。でも、私たちは知ってるんです」
クルアはマルコに目を向けた。それに答えるように、マルコもクルアを見る。
「...海賊には、素敵な人もいるっていうことを」
告白の様な言葉にマルコは一瞬ドキリとしたが、クルアの目を見てその考えは吹き飛んだ。強く、真っ直ぐ目の前の“海賊”を見つめるクルア。視線を海に戻してクルアは続けた。
「私たちは“海賊”という存在を、恨んではいけない。絶対に」
「......」
マルコは何も言えず、ただクルアの横顔を見た。そして海を見る。
『オヤジを海賊王に』──その一心でこの海を渡ってきたマルコ。その間にも多くの海賊と出会い、戦ってきた。自分と白ひげを引き合わせたこの海。それを海賊である自分と、海賊に恨みを持ちながらも『恨んではいけない』というクルアが見つめる。正直マルコは、複雑な心境だった。
「本当は、ナマエにも分かってほしいんです」
間をおいて、再びクルアが話し出した。その声に引き戻されたマルコは、
「あぁ...さっきの」
とだけ呟いた。えぇ、さっきの。クルアは苦笑いをした。
「あいつは...ナマエ、は...」
「ナマエは、責めているんです。自分のことを」
「責めてる...?」
視線を手すりにおいた手に落とすクルア。
「ナマエは...両親が殺されたのは、自分のせいだって思ってるんです」
「でもそれは...酒がなかったからで...」
先程の会話を思い出してマルコが言うと、クルアはそうです、と返した。
「そのとき...ナマエはお遣いを頼まれて店を出ていたんです。お酒を買ってくるように、と」
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