「えぇ...ナマエは私たちの妹です」


確かめるように呟くクルア。その瞳に少し陰が差したことには誰も気づかなかった。──ただ1人、マルコを除いては。そしてクルアは、ぽつりぽつりと話し始めた。


「私たちの親は、数年前に殺されたんです。──海賊に」

「!」

「この酒場は元々、両親が生前やっていたんです。両親はこの店が大好きで......海賊のことも、愛していました。でもある日」


クルアが苦しそうな顔をする。


「姉さん」


いつの間にかクルアの横にはカイルがいて、その震える肩を抱きながら彼女の言葉を引き継いだ。


「ある日、悪い噂ばかりの海賊がこの島に来たんです。自分の意のままにならなければ、一般人をも無差別に殺す...そんな奴らでした。そしてあいつらは、この店に来た。そのときはちょうど酒が切れていて、それで......」


カイルは顔をしかめ、言葉を濁した。言わんとしていることを察したマルコ達は黙り込む。つまり、両親を殺した“海賊”という存在を、あの少女──ナマエは恨んでいる。大切な人を奪った“海賊”。もう失いたくないという一心で、彼女は姉を守った。海賊から。先程の行動はそういうことなのだろう。


「私たちはその海賊を恨んでいます」


クルアが言葉を発する。


「でも、それは“あの”海賊だけ。私たちは両親が愛したこの店を...海賊を、守っていこうと決めたんです。だからこうして、今の私たちがいる」


そう言うクルアとカイルの瞳には、目の前の白ひげ海賊団がはっきりと映っていた。


「ただ...ナマエはだめなんです。海賊がさっきみたいに私やカイルに触れようとすると、いつもああするんです」


暗い話をしてしまってすみません、とクルアはいつもの笑みで言った。


「おめぇら!今日はもっと飲むぞ!!」


白ひげは大声で言い放った。




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