(──速い)


マルコはクルアの隣にいる少女に目をやる。 マルコが聞いた足音は、サッチに刃を突き付けたこの少女のものだろう。その気配には気づいたが、姿を視界にとらえる前に少女はサッチの前まで来ていた。酔っているとはいえ、マルコもサッチも隊長。周りにも隊長は多くいたのに誰一人として彼女を止められなかった。
短剣を取られてムスッとした表情の少女に先程の殺気を帯びた面影はなく、逆に幼さの残る顔をしていた。


「ナマエ」


クルアがその銀髪の少女の方を見る。


「あんたも謝りなさい」


厳しい顔つきで少女──ナマエにそう言った。


「謝る意味が分からない。あたしはただ──」

「謝りなさい!」


ナマエの言葉を遮って怒鳴るクルア。再び店内に沈黙が流れた。


「──ッ」


ナマエはクルアの奥にいるサッチを睨み、厨房の方へと走り去った。


「......本当にごめんなさい」

「や、もう謝るなよい」


俯くクルアにマルコが声をかけた。


「で、あの小娘は何者だ?」


白ひげがクルアに尋ねた。どうやら彼も思っていたことはマルコと同じ様で、その口もとは弧を描いていた。


「ナマエは...私の妹です」

「「「えぇー!?」」」


クルアの発言に驚愕する一同。それもそうだろう。このクルアとカイル姉弟の妹だと言われても、性格・容姿共に似ても似つかない。白ひげだけが、そうかと言って笑っていた。




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