「クルア」
マルコが声をかける。カイルと喋っていたクルアが視線を向けると、カイルもマルコを見た。
「そいつは誰だい」
あまりにもさらっと尋ねたマルコに、おいおいおい!とサッチが止めにかかる。まだ心の準備が、と言うサッチ。しかしそれも気にせず、クルアはもっとあっさりと答えた。
「カイルです。私の弟なの」
「へ?」
笑顔のクルア。隣のカイルは、どうも、とこれまた笑顔で頭をぺこりと下げた。その笑顔はどこか似ているものがあった。クルアの言葉に気の抜けた返事をしてから時が止まっていたサッチ。そして
「おぉ!そーかそーかぁ!」
突然大声を出して満面の笑みを浮かべる。サッチだ!よろしくな!と、ちゃっかりカイルと握手までしていた。
(さっきまでうじうじしてたのは、どこの誰だよい)
マルコがそう思っていると、エースも横で分かりやすすぎだぜ、と笑っていた。
「じゃ、姉さん。俺は戻るよ」
皆さんごゆっくり、と笑顔をマルコ達に向けて、カイルは厨房へと戻っていった。
「しっかりした弟だねい」
とマルコが言うと
「そうですね。カイルは...私よりもしっかりした、いい弟です」
クルアは厨房に続くドアを見つめながら、そう答えた。いつものように微笑んでいたが、その目はどこか、寂しそうだった。
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