「ねえ、これってさ」


なあにー?と私にくっついてその手元をみる嶺二。肩に顎を乗せて、長い腕を私の身体に回す。頬を掠める柔らかい髪が少しくすぐったかった。


「本当に寝てるところ撮ってるの?」


私の手には、ついこの間出たばかりの彼の写真集。

温泉に浸かっている嶺二。歯磨きしている嶺二。海で遊んでいる嶺二。少し色っぽい嶺二。

アイドルの彼と付き合って一年が過ぎて。初めはこういうものを見るのもなんだか嫉妬心が湧いていたけれど、だんだんなくなってきていた。ファンに愛される等身大の嶺二が好きだから。結局そこに惹かれたのだ。そんなこと、本人の前では口にしないけれど。


「違う違う。これは寝てるフリしてるんだよーん。...ってそんなこと言わせるー?」


寝顔がアップになったページから、私の顔へと視線が移された。


「なんでそんなこと聞いちゃうかなぁ。夢がないよ、夢が!」

「うーん。だって、いつももっと口開いてるし」

「うっそ!」

「ふふふ」


ねえ、それホント!?さあどうでしょうか。ちょっとなまえちゃん大人にイジワルしちゃだめだよっ。はいはい。




興奮した嶺二をなだめて、また私は写真集を読み出した。大人しくなった彼は今、私が背にもたれ掛かっているソファの上で眠りに落ちていた。静かな部屋に聞こえるのは、嶺二の寝息と紙をめくる音。

ふと振り返るとすぐ傍にある、彼の綺麗な寝顔。人気アイドルの休日は僅かで、二人にとっては貴重な一日。家で会ってゆったり過ごすのが、私たちはお互いに気に入っていた。


整った顔と、無造作に目にかかった長い前髪。作り物じゃない嶺二の寝顔は、どんなファンでも見ることが出来ない。撮ることも出来ない。私だけに見せてくれる、その姿が愛おしくて。


お疲れさま。

おやすみなさい。

大好きだよ。


「れいじ」


たくさんの想いを込めて、彼の名を静かに呟いた。


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