「ではではーっ!ミューちゃんとセッシーの合流を祝して、カンパーイってえええ!ランランもう食べてるし!」

「っせえな」

「れいちゃん!カンパーイ!」

「おとやんいい子っ!カンパーイ!」

「ショウ、それ取って」

「僕が藍ちゃんに取ってあげますー」

「ハルカ、これは何ですか?」

「それは、」

「まったく...、静かに食事が出来んのか愚民どもめ」


賑やかな食卓。テーブルを囲むのはミューちゃんを含むぼくたち先輩組とST☆RISH、セッシーに後輩ちゃん。たくさん並ぶ料理は主にぼくとひじりんで作った。未成年の子たちはジュースだけど、ぼくとランランとミューちゃんはお酒。横から物欲しそうに見てたおとやんに舐めさせてあげようとしたら、アイアイとトッキーがすごい勢いで睨んできたからやめておいた。


「嶺二」

「んー?」


パーティーという名の懇親会も中盤。大人しくモリモリ唐揚げを食べていたランランがぼくを呼んだ。


「雪蛍は」

「部屋で作業中なんじゃない。仕事いっぱいもらうから、引きこもりになるんだよ」


ぼくより先にアイアイが答えた。そのアイアイが唐揚げを口に入れたので、おいしい?と聞くと、別にレイジが鳥から育てたんじゃないでしょ。まあ味付けは悪くないけど。なんて返ってきた。ほーんとアイアイはツンデレちゃんで困っちゃうね!


「ったくメシ食えっていったのに」

「彼女にそんなこと言ったって無駄。どうせまた食べてないよ」


パーティーするから夕飯一緒にどう?と誘ったときの雪蛍ちゃんを思い出す。作業があるのでいいです、とは言ってたけど、それは理由の半分だろう。もう半分は、やっぱり対人関係だと思う。彼女は慣れるまでに時間がかかる。ってなんだか小動物みたいだなぁ。


「......あれ。なになに、みんなどうしたの?」


騒がしかった空気がいつの間にか一変。苦い顔をしているのはST☆RISHたちで、後輩ちゃんとセッシーはそんな彼らの様子に疑問符。後の三人は気にも留めず食事を続けてるけど。


「えっと......」


おとやんが言葉を濁す。


「ブッキー、レディは俺達のこと、何か言ってたりしたかな?」

「雪蛍ちゃんが?」


別に何も。なんかあったの?そう問えば、なっつんがしゅんとした。


「僕たち、雪蛍ちゃんを怒らせちゃったんです」

「え?」


なになになにっ、どういうこと?なっつんの一言に反応するのはランランやアイアイも一緒で。ミューちゃんも視線を彼らに投げかけていた。


「昨夜、彼女の素性について私が質問したんです。そのときに...彼女を怒らせてしまったんです」

「ひどく、癇に障ったようだったな...」

「えーっと、何言ったのかな?」

「俺らと年変わんねえのに、すげえよなって...。そしたら、才能だけで出来るほど甘くないんだって...」


ああ、そういうことか。翔たんの説明はぶつ切れだったけど、十分この子たちと雪蛍ちゃんのやり取りが目に浮かんだ。納得しているぼくの隣で、ランランが音を立てて缶ビールを置いた。


「てめえら最低だな」

「っ、ちょっとランラン!」

「最悪だぜ。あいつはそういうこと言われんのが一番嫌いなんだよ。ふざけんじゃねえ」


ランランは鋭く睨んだ。対象となった翔たんがびくっと身体を震わせる。ランマルやめなよ。アイアイの声に、舌打ちがひとつ響いた。


「ま、まあ、そんなに気にしなくて大丈夫だよん。雪蛍ちゃん何も言ってなかったし。いつも通りだったからさっ」


ぼくがなだめている間に、ランランは席を立った。あれ、ランラン?部屋戻る。小さな声でごちそうさまを言うところは律儀だ。すぐ怒っちゃうのは難点だけどね。


「でもさ、」


ランランの後ろ姿を見送っていると、翔たんが口を開いた。


「徳永ってなんか、すげーのは分かるんだけど...」


なんか、取っ付きにくいっつーか、

そう零した。トッキーがぼくたちの方を一瞥する。


「そうだろうね」


アイアイが発した声に、視線が集まった。


「彼女はあまりすぐに人となれ合わないから。まあ、キミたちがユキホと仕事で関われば分かるよ」


意味深な言い方だけど、そうとしか言いようがないのも事実で。ぼくはアイアイの言葉に頷いて見せた。


「そうそう!雪蛍ちゃんの音楽に対する情熱を肌で感じれば、ビビッときちゃうよ!」


それに、結構可愛いところもあるんだよねー。

ね、アイアイ?知らない。ボクはレイジみたいに下心丸出しの人間じゃないから分からない。ちょっとアイアイその言い方は語弊があるよ!?


「私も、そう思いますっ!」


声をあげたのは後輩ちゃんだった。みんなに見られて一瞬あっという顔をしたけれど、伏し目がちになって微笑んだ。


「雪蛍ちゃんは、素敵な人です。あまり私もお話してないですけど、笑顔が可愛らしくて...優しい人です」

「七海、」


へーえ。そっかそっか。雪蛍ちゃんにしては珍しいんじゃない?すぐに笑顔を見せるなんてさ。ちょっと嬉しくなった。だって、此処にはぼくら以外に、もう雪蛍ちゃんのことを理解してくれる子がいるんだから。


「さっすが後輩ちゃん!てことで、みんなも雪蛍ちゃんのことよろしくねん!ぼくちんの大事な妹ちゃんみたいなもんだしさっ」


はい、と素直に返事をする新人くん一同。素直は良いことだね!ぼくはお皿に料理を少しずつ盛り付けていった。


「ユキホのところ?」

「うん。お裾分けしてくるね」

「転んで廊下にぶちまけないでよ」

「そんなドジっ子に見えるのぼく!?」


再び明るさを取り戻しだしたその場を後にして、ぼくはデリバリー嶺二として出動した。


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